マンション管理士の独り言・・・107

個人組合員と法人組合員とで管理費負担に差をつけることについて

最近は、管理費負担や議決権割合にこだわっています。そんな中、興味ある裁判例がありましたので、ご紹介します。

「本郷ハイツ」管理費差別事件  東京地裁 平成2年7月24日判決
マンションの管理費負担につき、個人組合員と法人組合員とで金額差を1.65倍とした管理規約および総会決議を民法90条の公序良俗に違反しているとして無効にした事例です。

このマンション管理組合では、管理規約で管理費負担を法人組合員と個人組合員との間で差をつける事ができるとされ、その差や額は、総会の決議で定めることができると規定されていました。
当初は個人組合員であった区分所有者が、後に法人組合員となり相変わらず個人組合員の負担額のみを支払っていたために、管理組合がその差額の支払いを求めて提訴しました。
判決では、区分所有法19条では管理費は持分に応じて徴収できるという例外を認めているので、個人組合員と法人組合員との間で差異を設けるということも直ちに違法とはいえない。
しかし、特段の事情のない限り、その差異が合理的限度を超え一部のものに特に不利益をもたらす事までは認めておらず、本件のように管理費で1.65倍もの差異は合理的範囲を超えて不平等であるとしています。
また、判決の中で、法人は通常利益を目的とし収入は高いはずという点も、中小企業では必ずしもそうとは云えない面もある。
更に法人であるがゆえに必ずしも個人よりも共用部分を多く使用するとも云えず、使用程度は業種や業態により大きく異なる。
本件では法人組合員ではあるものの居住用に使用しているだけに過ぎないことも考慮しなければならない。

どうしても法人組合員に差異をつけたい理事長様へアドバイス
単に所有者が法人というだけでなく、商売や業務にその専有部分を使用していて、使用頻度が多いなどが客観的に認められるという状態ならば、可能でしょう。
この場合にも、一般的には1.5倍が限度と云われています。