マンション管理士の独り言・・・1138

マンション管理士の独り言・・・1138

 

「施工精度を確認する術がないじゃん」

 

宅建業法により、不動産屋さんは確認申請が下りる前に販売を開始してはいけません。

申し込みも受け付けてはいけません。

確認申請が下りる前の状態では、その建物が本当に建つかどうかまだわからない状態なので、消費者に売ってはいけません、って規制されているのです。

反対に言えば、確認申請が下りてさえいれば、青田の状態でも販売が開始できます。

日本の確認申請制度は、その土地上に建つ予定の申請建築物が建築基準法や消防法、その他の法令を順守していれば必ず下さなければならない、というものです。

つまり申請建物が法や条例などに適合しているかどうかを確認するだけの制度です。適合していれば必ず下さなければなりません。原則、近隣住民の承諾などは必要ありません。

 

確認申請が下りれば晴れて着工できます。工事着工後は、中間検査や竣工検査、消防検査などが確認検査機関(北九州ではほとんど日本ERI)により実施されます。

この検査は確認申請通りになっているかどうかを検査するのが主な目的で、施工精度などを検査するものではありません。

施工精度を確認するのは、第1に現場代理人、続いて設計事務所、そこからず~と遅れて売主さんです。

確認検査機関を含め現場代理人も設計事務所も皆、売主不動産屋さんに雇われています。

これらの現場を管理する人たちから見れば、自分たちの雇い主は売主不動産屋さんです。

日本ではあまりお目にかかりませんが自宅を建築する際に、設計事務所へ依頼することがあります。この場合、設計事務所へ発注する人と、竣工した家に住む人とは同一です。

自分が快適に住まうために設計事務所に依頼するし、建築会社を選ぶのです。

これに対し分譲マンションでは、売主不動産屋さんは、自分が住むためにそのマンションを建てているわけではありません。建てたマンションを一般の消費者へ売るために建てているのです。

 

分譲目的で建てるマンションでは、売主不動産屋からの設計事務所や建設会社に対するリクエストは、できるだけコストを抑え、容積率一杯、売れる部分を多く、そして年度末での引き渡しが絶対条件です。

施工精度に関しては優先順位はそれほど高くなく、あまり気にしなくても良いものです。

一方で自分が住むために設計士や建設会社へ依頼する発注者(オーナー)は少々お金がかかっても、余裕ある住まい、快適な住宅を希望します。

こちらの場合の施工精度は最優先事項です。キチンとした仕上げになっていないと設計士さんからやり直しなどを命じられる場合だってあります。

 

建てた建物に発注者自らが住む場合と、一般消費者へ分譲するのが目的で建てる場合とでは、同じく設計士に依頼する場合でも、その内容は大きく異なります。

 

マンションを購入するというのは、専有部分の区分所有権を取得するだけではなく、共用部分の共有持ち分も取得するのです。

取得する以上、その維持管理メンテナンスを行う義務も発生します。

出来の悪い建物や共用部分だった場合、その補修費用が余計に掛かります。

要するにお金がかかるのです。

売主や、施工会社、設計監理会社、管理会社を当てにしちゃ、ダメです。

共用部分の仕上げに対して、もう少し自分も共有者の一人だという意識をもってくれないかな、って思っています。