マンション管理士の独り言・・・・1112

マンション管理士の独り言・・・・1112

「マンションは、これだから怖い」

先日開催された通常総会で、組合員から発せられた言葉です。コロナ禍での総会でしたが、解決しなければならない重要な案件もあり、多くの組合員が出席されました。

総会議案の承認についておさらいです。
普通決議の場合、その議案は参加者の過半数の賛成で承認されます。
注意すべきは、①組合員総数の過半数でなく、総会参加者の過半数であること
②参加者のカウントは、総会への実出席者+委任状提出者+書面決議者の3つを合わせた数です。総会に出席していなくても、委任状を提出した人は参加者としてカウントされます。

実際に数字を当て込んでみると分かりやすいです。
組合員の頭数は100、議決権総数も100という100世帯のマンションです。
総会の定足数は半数以上ですから50出席していれば有効に開催されたとなります。
この場合の参加者は前述の通り、総会への実出席者+委任状提出者+書面決議者を指します。そして普通決議に求められる数は、総会参加者の過半数ですから、50の出席で26。
つまり最小の場合、100戸のマンションで26の賛成票あればその議案は承認となります。

しかも委任状の場合、委任する相手方は多くの場合、理事長です。理事長は、議案作成者の責任者であり、その議案に対しては賛成の立場です。「この議案は管理組合にとって有意義なものだから承認してね」って立場です。要するに理事長への委任=賛成票、となります。

100世帯で実出席が30、委任状提出者が30、書面行使者が30。100議決権で30+30+30=90が総会参加者。残り10は、不参加者。
そして議案について説明~質疑応答が行われました。
採決に入り、議長(=理事長)が“賛成の方は、挙手をお願いします”です。
30の実出席者のうち手が上がったのが、約10名。20名の方は、手を上げないままです。
3分の2の方が挙手しない光景というのは、ほとんど手が上がっていないように見えます。
ところが、議長からは「総会出席者での賛成者が10、理事長である私への委任状が30。このほか書面による議決権行使者が20です。私はこの議案に賛成なので、私の賛成票1を含めて61が賛成となります。よって本議案は承認されました」

総会に実際に出席した方の3分の2は、この議案を承認していません。
しかし結論は異なります。「本議案は承認となりました」になってしまうのです。

ここで、表題の発言が生まれました。「マンションは、これだから怖い」
続けて、「総会へ実際に出席した人全員が反対しても、この議案は承認されるじゃん。総会が開催されれば自動的に承認されてるじゃん。」
そうです。理事長への委任状が30。書面行使者の20が賛成。理事長自身の1を加えて既に51の賛成票が集まっているので、この時点で総会は有効に成立しているし、その議案も既に承認されているのです。レアケースではありません。頻繁にみる景色です。

続けて「委任状提出者や書面行使者より実際に総会に参加している組合員の方が、管理組合活動に熱心に取り組んでいるはず。実際の出席者の意見にもっと重きを置いてほしい」というご意見も出されます。
おそらくこのご意見は正しいと思いますが、だからと言って実出席者の賛成票を2倍にするなんて出来っこありません。

理事長とすれば、「皆さんのご意見を参考にさせていただきます」としか答えようがありません。
管理組合活動に対する取り組み方の温度が組合員それぞれで大きく異なります。
熱心な方や全く興味を持たない方もいます。しかし与えられた議決権は同じく1票です。
本当は、同じく1票ということが、「マンションは、これだから怖い」のかもしれません。