マンション管理士の独り言・・・1013

マンション管理士の独り言・・・1013

「今更聞けないシリーズ・・・専用使用部分」

共用部分は、そのマンションを購入した区分所有者全員が使用できる共用使用部分と、特定の人しか使用できない専用使用部分とに分かれます。
例を挙げれば、玄関ドアやバルコニー、サッシュ、専用庭などが専用使用部分に該当します。
“わざわざ共用部分にして、しかも特定の人しか使用できない専用使用部分なんてまどろっこしい扱いにしなくてもその人の物ってことで、専有部分にすればいいじゃん”と思いますが、ちゃんと理由があるのです。

専有部分とすれば、その人の物、法律的にいえばその人に所有権があるってことになります。
所有権というのは、その物を自由に、“使用・収益・処分”できる権利です。
使いたいときに自由に使い、その物で収益を上げることも出来ますし、さらには改造したり売り払ったり、廃棄できる権利のことです。
専用使用部分とは、この所有権のうちの使用する事のみを認めた権利なのです。

分かりやすい例として玄関ドアがあります。
マンションに入館する際のエントランスにある自動ドアは、そのマンションの区分所有者全員で使用する共用部分だとは分かりますが、各住戸についている玄関ドアのことです。
この玄関ドアは専用使用部分です。
その人の物となる(所有権のある)専有部分ではありません。

何故専有部分でなく、専用使用部分なのかというと、・・・。
分譲マンションには多くの方が住んでいて不特定多数の方の出入りがあります。
そんな大勢の人がいる分譲マンションで、もし火事が発生したら大惨事になります。
大惨事にならないように分譲マンションは、建築基準法で耐火構造物と決められています。
ですから分譲マンションは火に強い鉄筋コンクリートで出来ています。
構造体は火に強い鉄筋コンクリート造ですが、内部で使用する建具などに関しても火に強いものでなければならないという防火上の制限があります。
玄関ドアもこの制限を受けます。
もし住戸で火事が発生しても、玄関ドアを閉めていれば廊下や階段に延焼しないという玄関ドアを使用しなければなりません。
具体的にいうと摂氏700度の熱に耐える甲種鋼板ドア、つまり鉄製のドアを使うように義務付けられています。
仮にこの玄関ドアを専有部分としてしまえば、その人は玄関ドアを自由に“使用・収益・処分”できる所有権を得ることになり、「こんなスチール製の玄関ドアなんて気に入らない。取り払って木製のいい玄関ドアに変えよう」って言えちゃいます。
管理組合は「木製ドアに取り換えちゃ、ダメです」って言えなくなっちゃいます。
木製ドアに変えられちゃうともし火事になれば大惨事になるかもしれません。
そこで、専有部分ではなく、専用使用部分として、「玄関ドア本体はあなたの物ではなく、共用部分です。自由に取り換えることは出来ませんよ」って言えるように法律的根拠を持たせているのです。

ス・バ・ラ・シ・イ !! 誰か頭のいい人が考え付いたのでしょう。

専有部分、共用部分、専用使用部分という概念は、同じ集合住宅であっても賃貸マンションにはないものです。分譲マンションにのみある概念です。
この辺りもキチンと理解してない人は、マンション買っちゃダメです。