マンション管理士の独り言・・・1034

マンション管理士の独り言・・・1034

「理事にならなくていいから、5000円」

今回も最近の裁判例から、です。
横浜のマンションでのお話です。そのマンションでは高齢化が進み、役員の引き受け手不足という現状があるため、“役員にならないのならその任期中(2年間)毎月5,000円ずつ理事会協力金という名目で払ってね”という議案が全員一致で可決されました。
この規定に基づき2年間で12万円支払った組合員が後になって管理組合に対し、それは不当利得だから返せ、という訴訟を起こしました。
全員一致で採決されたのに、なんで後からゴチャゴチャいうのか分かりませんが、これに対して判決が下りました。
「理事に就任しないなら2年間毎月5,000円支払う」という決議は、役員のなり手不足や管理組合業務の複雑さに対応するため、全員一致で可決されたものであり、その必要性と合理性が認められ公序良俗に反し無効とは言えない、としました。

訴訟を提起した人の年齢や属性はわかりませんが、もし高齢の方ならば、また月額が5000円以上ならば、更には全員一致でなければ違った判断になったかもしれません。
どこの管理組合でも高齢化が進み、「ある年齢以上に達したら役員に就任しなくていい細則を作ろう」という議論になります。
ある年齢というのは75歳なのか?80歳なのか?また通院していれば75歳未満でもいいのか?ハンディキャップの方の扱いは?またそれらを証明するものは?75歳超えていても同居人に成人がいる場合は?
月額はいくらにするの?あまり高すぎのも考えものだし、低ければそれ位の金額で済むなら支払って役員にならない、ってこともあり得るし、ペナルティでなくて役員報酬にすれば・・・。などが噴出し、次期理事会にお願いしましょ、となります。
月額5,000円というのは一つの目安になるのかなって、感じです。

そこに住んでいない組合員(=不在区分所有者という)に対しては最高裁の判例があります。もう5年以上前になりますが、そこに住んでいない組合員(不在区分所有者)に対し、不在区分所有者協力金という名目で毎月2500円を上乗せ徴収することが有効かどうかが争われました。
そして、「不在区分所有者はそこに住んでいないので役員にならなくていい。その一方で、理事会を中心とした管理組合活動がキチンとなされているので、清掃も行き届いているし照明だって点いている。そのおかげで不在区分所有者が貸している住戸も高い家賃を設定できている。不在区分所有者は理事にならなくていいという管理組合員としての義務を果たしていないのに、管理組合の適正な管理のおかげで住戸を高い家賃で貸せているという利益のみを得ている。これは不公平だ。毎月2500円の不在区分所有者協力金を徴収することは合理性があり、有効だ」と判事されました。

国交省が5年おきに実施しているマンション総合調査平成30年版では、世帯主の年齢が60歳以上の住戸が全体の49,2%です。50歳以上となると実に73,5%となります。
そして、管理組合活動の将来への不安という項目では、1位に「区分所有者の高齢化」53,1% 2位に「居住者の高齢化」44,3% となっています。

マンションには「2つの老い」があると言われています。1つは建屋そのものの劣化。もう一つは「組合員の老い」です。(つぶやき主はこれらに加えて、管理規約の老いがあると言っています)
しかし建屋の老い以上に組合員の老いは待ったなしの、切実な問題となってきています。