マンション管理士の独り言・・・1041

マンション管理士の独り言・・・1041

「もしも、こんなマンションがあったら・・・」

1階に大きな店舗がある複合型マンションです。
この店舗はもとの地主さんが等価交換でもらったもので、議決権数も全体の3分の1程度を所有していますから、発言力大です。店舗トランプさんです。
その上からが住居になっていて、201号室の住民は太郎さんです。
角部屋なので日当たりもよく大きな住戸です。
お隣の202号室に韓さんが住んでいます。中住戸なので少し狭く、設備もそんなに整っていません。
また韓さんは201号室の太郎さんがお金持ちなのを妬んで恨んでいつかは追いつき追い越せと思っています。太郎さんは韓さんが妬んでいるのは知っていますが、極めて紳士的にふるまっています。

太郎さんと韓さんが高校生だったころ、韓さんは太郎さんに喧嘩で負けて子分のような扱いを受けていたことを今でも根に持っていて、事あるごとに「あの時のことを謝れよ」って言います。
太郎さんは、大人になってから韓さんに何度もご馳走して美味しいお酒を飲ませていました。
そして「あの時は若気の至りで申し訳なかったな。一杯飲ませるから水に流して仲良くしようぜ」といいました。
韓さんも「お互い大人だし、過去のことをいつまでも引っ張っていてはいけないな。未来志向で行こうぜ。飲んでさっぱり忘れようぜ」と気持ちのいい返事です。
ところが翌日になると、また過去に子分扱いされたことをチクチクと言ってきます。
「飲んでさっぱり忘れようぜ、と約束したじゃん。もうぶり返すなよ」と太郎さんが言っても、「忘れたけど、皆で飲むときは太郎さんがちょっと余分に出してくれてもいいじゃん」です。
仕方ないので太郎さんは皆と飲む時には韓さんの分まで少し多めに支払っていました。

韓さんは太郎さんが多めに払ってくれてるおかげでお金に余裕が生まれたのでしょう。そのお金で太郎さん、トランプさんと仲の悪い北ちゃん(203号室)にご馳走していたのです。
203号室の北ちゃんは、夜中に大声で歌うし、バルコニーでは管理規約で禁止されている打ち上げ花火を飛ばします。
それに、どうやらペットを飼っているようです。このマンションでは、初めからペットを飼っている人しかペットを飼えないような規約になっていますが、北ちゃんは闇で飼っている様子です。
理事長のトランプさんはじめ、英さんや仏さんなどで構成される理事会では何度も北ちゃんにペットを飼ってはいけないと注意しています。
そんな注意はどこふく風で、最近では大手を振って廊下を歩かせていたりします。

マンションの生活ルールを守らない北ちゃんにご馳走していることが分かったので太郎さんは韓さんに、「北ちゃんにご馳走しないと約束しないと、今後は多めにお金は払わない」と言いました。

これに対して韓さんは怒る、怒る。恐ろしいほどの怒りようです。
ご主人のみならず、奥さんも、同居しているお爺さんもお婆さんも、小学生の子供まで皆でお怒りです。
普通ならば誰かが、「そんなに怒らなくてもいいじゃん。太郎さんの言うことももっともだよ。少し冷静に考えよう」ってブレーキを掛ける人が家族の中で一人くらいいるのですが、全員で怒り心頭です。変わったご家族です。
子供さんが通っているPTA会合でも「太郎さんに昔いじめられた。そのことを忘れてまたいじめようとしている」と発言して他の役員さんからヒンシュクを買っていました。

最近ではトランプさんと太郎さんと韓さん共同で加入していた生協から韓さんが脱退すると言ってきました。
「前の様にちょっと余分に飲み代出してくれないから」というのが理由です。生協の特売情報が事前に入っていたのに一人抜けると旨味がなくなります。
トランプさんや太郎さんは、それなりのお金があるので何とかなりますが、一番困るのは脱退を宣言した韓さんなのに、興奮していてそれが分からないようです。
トランプさんや太郎さんは呆れてものが言えません。

でもお付き合いするしかないようです。同じマンションです。
「仲のいい隣人はいない」です。

このマンションには、トランプさんと仲の悪いシナさんと露さんも住んでいますから何かと問題が起こるタフな管理組合です。