マンション管理士の独り言・・・1046

マンション管理士の独り言・・・1046

「台風被害」

先週千葉県を襲った台風による被害で1週間も経ったのにまだ1万戸くらいが停電しています。
また、ゴルフ練習場の鉄柱やネットが付近の民家を直撃し、この鉄柱はいまだに撤去されていない状況です。全くお気の毒としか言いようがありません。
この惨状を見て思い出されるのが4年ほど前に北九州を襲った台風15号です。

この台風で中間のマンションの階段室に強風が殺到し、4階と5階の階段室FIX窓が破れてしまい、1階の駐車場に停めてあった車両13台に破片が飛び散り、突き刺さったという事件がありました。
車両13台のうち全損が5台、一部損が8台ということでその被害の大きさが想像つくでしょう。被害車両13台のうち6台くらいはお隣のマンションにお住まいの方のものです。
飛び散ったガラス破片は、お隣の敷地にまで及び駐車中の車両を傷つけたのです。
管理会社さんは手に負えないという事でつぶやき主にSOSのお声が掛りました。
被害車両への補償も行わなくてはなりません。
台風という自然災害だからと言って、車両損害に遭われた方に、お気の毒でした。自然災害ですから当方に責任ありません。ご自身の保険を使って修理してください。(アレっ、なんか聞いたセリフ)は一般社会では通用しません。
このマンションでは共用部分にマンション総合保険を付保していましたので、保険会社さんとの打ち合わせも大事でした。
このマンションのFIX窓補修の費用については保険金が給付されるのは確定していますが、飛散したガラス片で損害を被った車両については、“自然災害ですから当方に責任ありません。被害車両については保険金は給付されません。”という文書での回答が届けられました。

確かに損害が発生したことの原因の全てが台風などの自然災害ならば、このような扱いになります。しかし、管理に不備があれば話は別です。
管理に不備があったので、このような大きな事故になり第3者へ損害を及ぼした。管理がしっかり出来ていたらこれほどまでの損害は発生していなかった、ということになります。
弁護士とともに、1級建築士やガラス屋さんの協力を仰ぎながら、設置されていたガラスはどの程度までの風圧に耐えられるのか?耐風圧力が不足していたのではないか?大きな台風が来るのが分かっていながら、風の逃げ道などを予め作れなかったか?など様々な方向から検討し資料化し保険会社さんとの交渉です。

そして保険会社さんは、発生した損害の全ての原因が台風によるものではない、管理の不手際があったと認め、車両損害総額1300万円のうち900万円くらいの保険金を受領することが出来ました。
文章にすれば、簡単そうに見えますが、被害車両所有者との補償交渉、レッカー車手配、自動車修理工場との打ち合わせをはじめ、マンション管理組合理事会は10数度に及び開催しましたし、臨時総会だけでも5度くらい開催しました。
ホトホト疲れた仕事でした。

千葉の台風被害でゴルフ鉄柱やネットが倒れ掛かってきて損害を被られた戸建ての方へのアドバイスです。
鉄柱などが倒壊した原因の全てが台風によるものでなく、ゴルフ場側の管理に不備があったということを証明できればゴルフ場が付保している施設賠償保険の対象となります。
大型の台風が来るのが分かっていながら、ネットを外すなどの対応を取らなかった、鉄柱の強度は十分だったのか?毎年キチンと劣化診断を行っていたのか?などをゴルフ練習場側の弁護士さんとも協力して理論形成してください。
また、被害に遭われた方は全員戸建てにお住いのようですので、集団での話し合いにはあまり通じていないことが予想されます。
こんな時は、マンション管理組合の合意形成方法を学んで踏襲されることをお勧めします。

この案件くらいからでしょうか?厄介な案件ばかり持ち込まれます。