マンション管理士の独り言・・・1047

マンション管理士の独り言・・・1047

「原告適格」

大阪のマンションで、俳優養成所のレッスンルームとして使われている住戸の所有者に対し、「マンション居住者の共同の利益に反する行為」(共同利益背反行為)としてその使用差し止めの訴訟が提起されました。
訴訟を提起した組合員らはこのマンション管理規約では、「専有部分の用途は、“住居及び事務所やそれに類するもの”に限定されており、発生やダンス練習所は認められない。レッスン生の話声や物音、エレベーターの占拠などで組合員の平穏な生活が妨げられている」として使用の差し止めを主張しました。

これに対し裁判所は、「レッスン室としての使用は管理規約にある“住居及び事務所やそれに類するもの”に明確に反しているとは言えない、また、話し声や物音、エレベーターの占拠についても話し声や騒音の程度もそれほどでなく、エレベーターも長時間占拠しているとまでは言えない、部屋でのレッスンも土日に限定されている。これらより、組合員の平穏な生活が妨げられているとまでは言えない」と判事しました。つまり原告側の敗訴です。

更に裁判所は、「訴訟を提起した組合員らは、訴訟を起こせる立場にない(原告適格がない)」とも判事しました。
原告適格とは、特定の請求について当事者として訴訟を追行し裁判での判決を求めることが出来る資格のことです。
「管理規約では、共同利益背反行為に対して訴訟を提起できるものは、「管理組合法人」「(共同利益背反行為を起こしていない)他の組合員全員」とされている。このことは共同利益背反行為を起こしていない他の組合員全員に個別に帰属しているものではなく、管理組合という団体に帰属しているものだ。従って組合員が個別に訴訟を提起できるものではない」と判事しました。
原告側は、「このマンションでは理事会が機能不全に陥っており、総会にかける議案作成がおぼつかない。仕方ないので有志の組合員で提訴した」と主張しましたが認められませんでした。

ただし、「共同利益背反行為が区分所有者本人の人格権や共有持分権(所有権という物権)を害するものである場合は、区分所有者本人で訴訟を提起することも出来る」と補足説明しています。
管理規約に規定されている約束事(債権)では、共同の利益に反する場合は訴訟を提起できるものは、「管理組合法人」「(共同利益背反行為を起こしていない)他の組合員全員」に限定されるが、区分所有権という権利(物件)が害されそうなときは、個人でも訴訟を提起できるよ、という事のようです。

ちなみに共同利益背反行為が認められた裁判例として、①暴力団組長が組事務所として複数の暴力団組員を常駐させ他の組員とマンション内で乱闘した事案で、管理組合の競売の申し立てを認めた、②マンション内に専有部分を持っている区分所有者が長年にわたり野鳩の餌付け飼育を行い、そのまき散らす糞、羽毛、羽音が他の組合員の平穏な生活を脅かしているとした事案、③専有部分で大声や奇声を発し、消防点検に応じず係員の立ち入りを拒む行為がマンション区分所有者の共同の利益に反すると判断された事案などがあります。

小倉北区のあるマンションでは、自分の住戸のトイレを使わずに、管理人室横のトイレばかりを使用している組合員がいました。何故そうするのか誰も分かりませんし、つぶやき主も未だにわかりません。
これは共同の利益に反する行為には該当しないだろうな、と