マンション管理士の独り言・・・1048

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「マンション騒音トラブル」

多くの売主さんの上半期の決済月である9月末に引き渡しが行われました。売上計上するのは、契約時ではなく引き渡し時だからこの時期に集中します。
引き渡しを受けた購入者さんは、喜色満面で鍵をいただき晴れて入居します。
ところが、夢に描いていたマンションライフと現実とのギャップにちょっと面食らうのが入居して1週間くらい経ったころです。

その中で多くの方がストレスとして感じるのが上階からの足音、子供さんの飛び跳ね音、椅子を引っ張る音など、いわゆる騒音トラブルです。
今までの賃貸と違い、分譲マンションだから遮音性能がいいと思っていたけど結構聞こえるな~って感じです。
営業マンも、売らんがためにいい加減なトークしていますから、予想していたより上階の音が聞こえるなとなります。
そして、上階の方は引っ越し時に挨拶にも来ない、夜遅くまで子供を走り回らせていて教育がなっていない、などとなります。
管理会社に言って何とかしてもらおう、までに行きつきます。

ここでちょっと冷静に考えてみましょう。
このマンションの遮音性能はいくらで設定されているかについて考えることが必要です。市内多くのマンションはLL値45、Lh値50と設定されています。
L値は数字が小さいほうが遮音性能が優れています。
LL値というのは軽量衝撃音(ラウドネス ライト)で、ビー玉やコインを落とした時の軽い音です。
LH値は、重量衝撃音(ラウドネス ヘヴィー)で代表的なのが子供さんの飛び跳ね音です。
LL45等級は日本建築学会基準で特級、LH50で1級の遮音性能です。
客観的には、上階のスリッパ音は聞こえないがサンダル音は聞こえるって程度のものです。
まずは、竣工して出来上がった住戸が、チラシなどで謳っているL値が確保できているかどうかを売主さんへ聞かなきゃデス。
マンション竣工後、引き渡しまでの間に騒音発生装置で実際に上階から騒音を発してみて階下の住戸で騒音測定を行います。
これを環境調査と言いますが。この調査を実施しているか?実施していないならばどうやってチラシに謳っているL値を確認したのか?調査実施したのならばその結果はどうだったか?などのヒアリングを行います。
騒音トラブルは、何故か上下階のトラブル、或いはお子さんの躾がなってない、などに矮小化される傾向にあります。
購入者は、チラシで謳っているL値を信じて購入しています。もしこの数値が確保できていなかったら、これは誇大広告です。売主さんが対応しなくてはなりません。反対に確保できているのならば、それを分かって購入したのだからある程度は我慢しなくてはいけません。決して無音ではなくサンダル程度の音は聞こえますよ、というのを分かって購入したとなります。

その人の耳の良さや感受性、今まで住んでいたところの遮音性能、騒音発生頻度、時間帯などにより上階からの騒音に対し、それぞれの人でうるさいと感じる程度が異なってきます。
そうしても我慢できないのであれば、まずは直接上階の方に「お願い」に行くのが良いでしょう。
管理会社に依頼することもありますが、管理会社は第1ステップとして「全住戸対象にして、騒音注意」第2ステップとして「もう一度全住戸対象にして騒音注意」それでも騒音が止まない時は、仕方なくヤンワリと騒音発生源と思われる住戸の方へお願いに行くというのが通常の対応です。
注意を受けた方も、相手が管理会社フロントマンだと、どうしても目線が上なので、「自分宅ではない」「間違いなく自分宅と言い切れるのか」「いつも騒音には気を付けている」など反論されることがシバシバです。

2階建てのお宅で自分ちの子供が飛び跳ねても“ウルサイ”って感じないでしょ。知り合えば、そんなに気にならなくなる、っていうのが過去の経験です。