マンション管理士の独り言・・・1083

マンション管理士の独り言・・・1083

「だんだん低くなるハードル、それでも高い」

古くなったマンションを建て替えようとする場合、容積率に余りがあり増床出来る事が必須条件です。
今建っている建物が80戸だとして、容積率の余り分であと40戸住戸が増やせれば、その増床した40戸分で建築費を賄おうってことです。
デベロッパーさんにその40戸を買ってもらい建築費をねん出します。全国で300弱のマンションが建て替えに成功していますが、北九州ではまだゼロです。
建替えには5分の4の賛成が必要です。

容積率に余りのあるマンションはお見かけしません。
建築士さんは売主さんの要望もあってか、容積率を目いっぱい使って戸数を稼ぎます。
古くなったマンションの建替えを容易にしようとお国は容積率の緩和を行いたいのですが、近隣住民の反対が強くなかなかスムーズに行きません。
近隣住民からすれば、ただでさえ“うっとおしい”隣の10階建てのマンションが、容積率が緩和されれば15階建てになっちゃうじゃん、です。
容積率に余りのないマンションの場合、建築費のほとんどが自己負担になってしまいます。また最低でも2回の引っ越しが必要です。
容積率に余りがなく、また容積率の緩和も期待できない、建築費のほとんどを自分たちで捻出しなきゃ、歳とって2回も引っ越しするの嫌だ、では建替えのお先真っ暗です。

以前は個々人の判断で、“それなら今住んでいる住戸を売って他のマンションに引っ越すべ”でした。
しかしお国は古くなっているが建て替えはままならない、というマンションに対して“それならいっそ、そのマンションごと売ったらいいじゃん”という方針を出しました。

マンションの共用部分や敷地はそのマンション区分所有者の共有物です。
この敷地などの共有物の処分(この場合は、売るってこと)を共有者の5分の4の賛成で承認することとしました。
共有物の処分は、民法第251条により共有者全員の賛成が必要です。
しかし、全員の賛成では難しすぎるってことで全員の賛成を5分の4にハードルを下げたのです。
確かに建替えができにくく“いっそマンションごと売ってしまおう”という管理組合にとっては選択肢は広がるしハードルも下がったには違いありません。
それでも実務的には5分の4という数字はとても高いハードルです。

マンションに関しての法令などは緩和傾向にあります。
議案の成立要件も、区分所有法では区分所有者の過半数なのが標準管理規約では出席者の過半数。大規模修繕工事も以前は4分の3だったものが過半数で承認となっています。
建替えだって以前は全員の賛成でした。今は何度もつぶやくように5分の4.

今回敷地など共有物の処分を、従来の全員賛成から5分の4へ成立要件を引き下げました。
しかしそれでもまだ、高い。とてもとても高い。
そもそも、初めの全員賛成って言うのが現実離れしてる、って言うのが現場の感想です。