マンション管理士の独り言・・・1091

マンション管理士の独り言・・・1091

「特殊建築物定期報告」

分譲マンションは3年に一度特殊建築物の定期報告を特定行政庁へ行わなければなりません。行わなければならないとなっていますが、北九州市や福岡市ではアリで、下関ではナシと公共団体によってその扱いが異なっています。
もう30年くらい前に小倉北区三萩野の店舗付きのビルから外壁が落下し、運悪くその下を歩いていたご婦人に直撃し、お亡くなりになったという痛ましい事故をきっかけに始まったものです。
申請者はそのマンションの管理者ですから理事長さんですが、建物の調査を行い、申請書類を作成するのは通常1級建築士さんです。
1級建築士さんが、国家資格保有者として「この現況で間違いありません」と報告するのが建前です。1級建築士さんは、“まさか虚偽の申請は行わないよな、現況そのままに報告するよな”という前提があってのものです。
しかし、現況をアリのままに報告すると、その後管理組合が“大変なことになる”として現況とは異なる報告を行う1級建築士さんがいたりして困ってしまいます。

管理組合さんから、「特殊建築物定期報告をやってくれる1級建築士さんを紹介してよ」ってご相談を受けて懇意にしている建築士さんをご紹介しました。
しかし、そのマンションでは建物が竣工して検査済みの交付を受けてから引き渡しまでの間で1階店舗部分を増築しています。
分譲マンションで増築しているって信じられない状況です。
更に、建築時期は何時なのか定かではありませんが、ルーフバルコニーにも、もう一部屋増築しています。完全に違法建築状態です。
これまでは、この2部屋については“ないもの”として定期報告していました。
その建築士さんは、現況をアリのままに報告すると“大変なことになる”から“ないもの”としていた、と言っていました。

管理組合さんも、“現況と異なる報告では不味い”と思い現況をそのままに反映させた定期報告を行おうとしていろんな建築士さんに当たったみたいですが、皆から断られたようです。
打診された建築士さんは、とても扱える案件でないと判断したのでしょう。
そこで困ってしまってつぶやき主へのご相談です。
現況そのままに報告すると管理組合内部で起こるであろう“いろんな軋轢”をご説明し、それでもいいならばご紹介しましょう、ということで何とかやってくれる建築士さんを探し当てました。

最悪の場合、建築局指導課から「違法建築なので撤去するように」という指導があることが予想されます。
厄介なのがその増築部分のオーナーは、増築された状態で前の所有者から中古で購入した、いわゆる善意の第3者です。更にその店舗を飲食店にもう10年以上貸しています。馴染みのお客さんも沢山いるようです。
考えただけでも、関係者は、現在のオーナー、現在の賃借人、以前のオーナー、中古で売買した際の不動産業者などです。
ルーフバルコニー住戸の現所有者も同様に増築後に中古で購入した善意の第3者です。

一部組合員からも増築された部分は、管理費等を負担してもらっていないので、その分を追加負担してもらってはどうか?という当然ともいえるご意見が出されました。
しかし、増築分の管理費を負担してもらうとなると、管理組合として増築部分を承認することに繋がるので、ダメだしをしています。

消防署からは“避難通路が確保できていない、早急に確保するように”との指導も受けています。増築部分があるので避難通路が確保できていない、確保するための費用を管理組合が負担するのは納得いかない、というこちらも当然のご意見があります。

厄介な案件ばかりです。