マンション管理士の独り言・・・1132
「ADR」
ADRとは、裁判外紛争処理のことをいいます。
何かトラブルがあった時、どのように対処するかについて、トコトン裁判まで起こすが10%くらいで残りの90%“諦める”“我慢する”“忘れる”で占められています。
マンションの場合は、これに加えて、“泣き寝入りする”が加わります。
裁判まで事を荒立てたくない、時間とお金ばかりかかって、それで勝つとは限らない、そもそも裁判なんて敷居が高すぎる、などが理由でしょう。
時間とお金を削減させ、もっと民間の人がトラブル解決に利用しやすい制度を考えよう、ってことで少額訴訟や支払い督促なんていうのが出来ました。
少額訴訟や支払い督促は、相手方がそれを望まなければ通常裁判に移行しますので、あまり使い勝手のいいものではありません。
そこでADRの登場です。
分譲マンションの場合、売買契約時のトラブルや建物の施工不良・瑕疵に関してのトラブルなどが該当します。
ADRを利用できる分譲マンションは、原則「建設性能保証」を取得している物件に限られます。このほか、マンションあんしん保証に加入している物件も利用できます。
平成10年以降くらいに建築されたマンションが該当します。
申請先は、国交省の認定を受けた団体となり、北九州市では「建設紛争審査会」「福岡県弁護士会」「国民生活センター」くらいです。
「建設紛争審査会」は県庁の建設局指導課の中にあり、もしここで扱うとなればその都度県庁まで出向くことになり、少し手間が増えます。
また、戸建ての請負契約でのトラブルに特化している向きがあり、発注者と請負者との間での紛争処理がメインです。
分譲マンションの場合、購入者(買主)と開発業者(売主)との間で売買契約を結びますが、施工者(ゼネコン)さんと購入者との間では直接的な法律関係はないので、建物共用部分や専有部分に不具合や瑕疵があっても受け付けてもらえません。要するに分譲マンショントラブルは受け付けられません。
「消費生活センター」は専有部分の瑕疵や不具合にお関してのトラブルは扱ってくれるかもしれませんが、管理組合が共用部の不具合などで売主との間で発生したトラブルについては受け付けてもらえません。個人での申請しか受け付けません。
団体や法人に関しては受け付けませんということです。
管理組合さんが、共用部の瑕疵や不具合に関し売り主との間でトラブルが発生しADRで解決しようとする場合、北九州では「福岡県弁護士会」が窓口となります。
「福岡県弁護士会」のADRは斡旋と仲裁のみで調停はありません。
先ずは、小倉北区金田にある弁護士会館で担当弁護士さんに相談します。
要予約で相談料5,000円持って行きましょう。
そこで概略を相談し、その担当弁護士さんから弁護士会へ紹介書を書いてもらいます。
それを添付しての申請受付となります。申請書類は、綺麗なO女史が丁寧に教えてくれます。
代理人に関しても通常は弁護士しか認められませんが、ADRの場合3~4回の打ち合わせで結論を導き出そうとしますのでそのトラブルに詳しい人、マンションに詳しい人のほうが結論までがスムーズに運びます。
マンション管理士としての代理人出席も認められる場合があります。
ADRはあくまでも相手方が同意して初めて開始されるものです。
しかし重要事項説明書に“当マンションはADRが利用できます。トラブルが生じたときは国交省指定の紛争処理機関にADR申請が出来ます”と謳っている売主さんがよもやADRを請けないなんてあり得ないと思っています。そうだよね~