マンション管理士の独り言・・・1134

マンション管理士の独り言・・・1134

 

「エレベーターリニューアル」

 

北九州では3年に一度、「特定建築物定期報告」が義務つけられています。

分譲マンションも報告対象です。管理組合は1級建築士などの資格者に依頼し、調査報告しなければなりません。40戸のマンションならば8万円くらい、100戸超になると15万円くらいかかります。

その内容は主にタイル剥離状態や、火災設備などについて「適格」か「不適格」かを報告するものですが、この中にはエレベーターに関するものも含まれています。

 

平成20年以前のエレベーター設備に関しては、「適合」ではなく「不適格」に〇印がつけられます。

「不適格」の横には、既存不適格の文字が添えられています。

違法ではなく既存不適格です。既存不適格というのは、その設備を設置したときの法律や条例には合致していたけれど、その後の法改正などで今の基準は満たしていないというものです。当初は建蔽率を満たしていた建物が増築により建蔽率オーバーになった場合(違法建築物)などとは異なります。

 

高校生が扉に挟まれて亡くなられた平成17年のシンドラー社のエレベーター事故を踏まえて平成20年に2重ブレーキが義務化されました。

その他地震時に人間が肌で感じるS波の前の予震P波を察知し最寄り階に着床するよう基準が変わりました。

ですから平成20年以前のエレベーターは2重部ブレーキになっていませんし、S波対応です。従ってこのマンションは、エレベーターに関しては既存不適格になってしまいます。

今現在使用しているエレベーターを2重ブレーキにしたり、P波対応にするのは無理なようです。

リニューアル時にこれら設備を整え「適格」エレベーターとします。

 

メーカーは大体20年過ぎたくらいから、そのエレベーターのパーツの生産を徐々にストップしていきます。

生産ストップしても在庫がありますから直ちに供給されない、ってことはありませんが、在庫も少なくなってくるとメンテ会社の方から、「在庫が底をつきそうです。そろそろリニューアルを検討してください」って要請があります。

分譲マンションでは25年目安でリニューアルしているところが多いというのが実感です。

 

新築後エレベーターメンテ社をメーカー系から独立系に変更している場合は、リニューアルに際して現在使用しているメーカーへ見積もり提出を依頼しても出していただけません。自社の関連会社でメンテしていないエレベーターには純正でないパーツが使用していたり、そもそもキチンとしたメンテがなされているのかどうかも疑わしいなどの理由で見積もり提出していただけません。

他社製に乗り換えるなんて言うのは不可能です。

例えば現在使用しているのが三菱製で、リニューアル時に東芝製に変更しようと考えても無碍なく断られます。

これを“三菱が見積もり出さないなら、東芝に出してもらえ”なんて無理を言う組合員さんがいて困ってしまいます。

 

義務化によりリニューアル後は2重ブレーキとなりますが、エレベーターは常にブレーキをかけて箱を停めています。箱を稼働させるときにブレーキを緩めるとなります。

車では常にはブレーキをかけておらず、スピードを緩めるときにブレーキをかけるという使用法ですが、それとは真逆な使用方法となっています。

2重ブレーキになったことで、今までより少し着床時の音が大きくなったような気がします。

その辺も考慮しながらリニューアルを進めましょう。