マンション管理士の独り言・・・1136

マンション管理士の独り言・・・1136

 

「議決権」

 

三井住友信託銀行とみずほ信託銀行とが、企業総会の前日に届いた議決権行使書をカウントしていなかったことが発覚しました。もう昭和の時代から続いていたようです。

ベラルーシやロシアで行われているような選挙での相手方の票を握りつぶすような行為と一緒です。

金融庁は、カウントされなかった議決権を集計しても議決された決議は覆るほどではなかった、と言っていますが、怪しいものです。

 

分譲マンションの管理組合総会と比べて議決権の数が違うので一緒くたにできないでしょうが、もし分譲マンションでこんな事したら大変なことになります。

総会というのは、株主や管理組合員が自己の権利を行使できる唯一の場です。その権利を奪うことに他ならない行為です。

 

管理規約には、総会開催について厳格に定められています。

区分所有法では総会開催の7日前まで(標準管理規約では2週間前まで)に議案書を配布となっています。

7日というのは、ポストへ投函する日と総会当日は外して7日ですから、開催日が9日ならば1日に投函しなければなりません。

この7日(もしくは2週間)という日にちは厳格に守らなければなりません。

「7日前までに議案書配布」と規定されている規約で、5日前に届いた場合、“7日前なら総会に出席できたが5日前に届いたので出席できなかった。議決権を行使する権利を奪われた”として提訴され、その要求が認められた裁判例はいくらでもあります。

 

そして当たり前ですが全員へ配布することが必要です。

もっとも転居して転居先の届け出がない組合員に対しては、居所を探し出してまで届けることは求められていません。

この場合は、最後に届け出のあった住所かその組合員所有住戸へ届ければいいことになります。

 

以前理事長の解任を求める臨時総会を開催したときは、理事長が組合員名簿を出してくれないため、全戸の謄本を取って、謄本記載の住所へお送りしたということもありました。

何故、そこまで気を配って組合員全員へ議案書を配布するのかというと、仮に届いていない組合員から“自分には議案書届いていない。一部の者に議案書が届いていないという手続きに不手際(瑕疵)あって開催された総会は無効だ”と提訴されると、これも認められたケースが沢山あるからです。

大規模修繕工事を発注するなど重要議案の際には、悪意ある組合員に後から“自分宅には議案書届かなかった”と言い出されないようにするため、いちいち投函しているところを写真に収めたりします。

 

また議決権行使書を添付する場合は、議案の要領が分かるようにしなければなりません。

議案書を読んだ組合員が、その内容を理解できて、賛成か反対か判断できる程度にまで詳細なものにしなければなりません。

 

管理組合員は敷地や共用部分の共有者の一人です。所有権者です。その権利を奪わないようにするのは当たり前です。

 

三井住友信託銀行とみずほ信託銀行の総会担当者にはマンション管理士を如何でしょう?