マンション管理士の独り言・・・1165

マンション管理士の独り言・・・1165

「市内分譲マンションの遮音性能」

10㎝のコンクリート壁の透過損失は45dbです。

10㎝のコンクリート壁の一方から100dbの音を当てると、反対側では55dbの音が聞こえる。

つまり10㎝のコンクリート壁により音が45db低減する(=損失)というものです。

コンクリートの壁は厚ければ厚いほど透過損失は増します。

従ってマンションの床コンクリート(スラブ)を厚くすればするほど階下への遮音性能は向上することとなります。

市内マンションの床コンクリートスラブ厚は判で押したようにどの売主さんも20㎝です。これをもっと厚く25㎝や30㎝にすればそれだけ階下への遮音性能は増すわけですが、厚くすると自重が増えるため、そのコンクリート床を支える柱も太くしなければなりません。柱を太くすると居室に柱が張り出すことになりそれだけ居住空間が狭くなってしまいます。

そこでコンクリート床スラブを厚くするが同時に軽量化も目指したものが、ボイド(中空)スラブというものです。

コンクリートの中を一部中空にしてその中に発泡スチロールを埋め込んでいます。

これにより厚みを増すことが出来るのと同時に軽量化も図れるので柱を太くしなくて済みます。

しかしコンクリートスラブの遮音性能は、スラブの質量、つまり重さも関係してきますので、軽量のボイドスラブでは、同じ厚みの在来(通常)スラブより劣ってしまいます。

在来スラブ20㎝とボイドスラブ250㎝とが大体同じくらいの遮音性能と言われています。

また、同じコンクリートスラブ厚であっても梁間が長いとそれだけスラブの“たわみ”も見られますので、遮音性能は低減します。南側ワイドスパンなんて謳い文句ですが、梁間が長い分だけ階下への遮音性能は低減するので厄介です。

市内マンションでは、居室の床の造りは20㎝在来スラブでも25㎝のボイドスラブであっても、その上に防振ゴムを履かせたスタッド(受け金物)の上にコルクを圧縮したようなベースパネル、その上に12㎜の床材を貼る仕様となっています。

この仕様では、LL(ラウドネスライト・・軽量衝撃音)45、LH(ラウドネスヘヴィー・・重量衝撃音)がやっとです。L値は数字が少ない方が遮音性能が優れています。

子供さんが飛びはねる音はLH(重量衝撃音)ですから、結構聞こえちゃいます。

“分譲マンションだから賃貸マンションと違って、上階からの音は聞こえない”なんて間違っても思ってはいけません。

市内マンションでも優れた遮音性能のマンションがないわけではありません。グランリビオ高見五条、とリビオ大手町グランエンブレムです。今のグランリビオシリーズでないのが悲しいところです。

床が通常マンションの2重構造ではなく4重構造になっています。しかもそのうちの一つは鉛が入った自重のあるベースパネルです。LL30、LH35程度です。上の階でバスケットボールでドリブルしても、下の階では、“どっか遠いところでドスッと微かな音が聞こえるな”って感じです。

その次にランクするのが、ザハウスシリーズです。ボイドスラブですが厚が30㎝あります。

かなりの遮音性能です。

市内売主さんも、外観デザインやインテリア、設備などよりもっと遮音性能など居住性能そのものに目を向けて開発してくれないものか、と考えています。