マンション管理士の独り言・・・1174

マンション管理士の独り言・・・1174

「建築工期」

これから3月にかけて新築マンションの引き渡しラッシュの始まる時期です。

売買が成立した一つの住戸をデベさんが売り上げ計上できるのは、契約時や竣工時ではなく引き渡し時です。

従って年度が4月1日~翌年3月31日までのデベさんにとっては何としても3月31日までに引き渡ししなければなりません。

4月1日とではたった一日の違いですが、売り上げを今年度に計上できずに次年度になってしまうという、大きな違いとなるからです。4月1日に引き渡しがずれ込みでもしたら、営業マンは上司から怒鳴り上げられます。

何としても3月末までに引き渡しを実施するために十分な工事期間でなかったり、養生期間が確保出来ていなかったりすると、それが建物の不具合として現れ、そのしわ寄せは購入者に来ちゃいます。

1月末竣工、2月中旬までに内覧会を終わらせ、2週間くらいの手直し期間を経て、3月中旬くらいに引き渡しという物件ならば、キチンとした工程が確保できていると考えられます。

しかし3月初めに竣工、中旬に内覧会、確認会など行わずに3月末の引き渡しという物件には要注意です。

出来上がった時にはわからないから厄介なのですが竣工後3年~5年くらいに不具合ヵ所がアチコチで見られるようになります。

その時は瑕疵担保期間もアフターサービス期間も過ぎているので“管理組合さん自費で修理してね”ってことになっちゃいます。

そんな事例はいくらでも目にしてきました。

特に養生期間は必要です。コンクリート打設の場合、打設後28日で設計強度に到達します。しかし夏場では乾燥が早く1週間程度、冬場では反対に40日を超えちゃう場合もあるようです。

特に冬場のコンクリート打設には気をつかわなければなりません。

建築基準法施工令第75条には「コンクリート打ち込み後5日間は、コンクリートの温度が2度を下回らないように養生しなければならない」と規定されています。

冬場ではコンクリートの温度は10~15度くらいありますが、夜間温度が冷え込むこともあり、2度を下回らないように適切な養生を行わなければなりません。

また、コンクリートには水が使用されますので、水分の内部凍結にも気をつける必要があります。低温にならないようなしっかりとした養生が必要です。

塗装ではもっと養生期間に注意が必要です。コンクリート面を平滑にし含水率も一定以上にする必要があります。含水率などは塗料によって異なりますが、8~10%以内、PHも9~10の範囲に収まるまで塗装は行いません。

通常は、下塗り、中塗り、上塗りと3度塗ります。それぞれの工程の間にも養生期間が必要です。特に中塗りと上塗りの間は最低でも24時間以上空けることが必要です。

養生方法や養生期間を確認することは、ほとんど不可能ですが、全くないわけでもありません。

現場代理人(監督さん)が付けている工事日報があります。これにはその日実施した工事内容とともに、天気や気温、湿度まで記載されています。

簡単には見せてくれないと思いますが、“冬場コンクリートの温度が2度にならないようにどんな養生をしたのか?”“コンクリート打設後に設計強度を確保するまで養生していたか?”“各塗装間の養生期間はどれくらいだったのか?含水率は?”程度は聞いてみることが必要じゃ、ねエ。出来上がったものを買うんだから。