マンション管理士の独り言・・・1199

マンション管理士の独り言・・・1199

「バルコニー手摺」

マンションに限らず戸建てでも2階以上のバルコニーには、手摺を設けなければなりません。

建築基準法で、手摺の高さは、床面から110㎝以上を確保しなければならないと規定されています。

更に格子の間隔も、110㎜以下と決められています。

これは折角110㎝以上の高さを確保したバルコニーであっても土台があればよじ登れてしまうので、足がかりにならないように靴が入らない間隔、更には子供の頭が入らないように110㎜以下の間隔となっています。

建築基準法で規定はされていないものの、バルコニー手摺は人がもたれかかっても脱落しない強度を確保するのは当たり前のことです。

また、手摺と構造躯体との取付部分に用いるボルトやビスは容易に脱落しないようにしなければなりません。

高さがあるマンションで、例え1㎝程度のビスであっても脱落して下に落ちちゃえば、運悪く歩いていた通行人や車を傷つけることになります。当たりところが悪ければ大怪我しちゃいます。

もしビスが落下して通行人が怪我を負ったら、管理組合の責任です。

この場合は民法の原則(過失責任)は適用されず無過失責任となり、管理組合がどんなに日頃のメンテナンスを行っていたとしても責任が及びます。

“そのためにマンションは共用部保険で施設賠償特約を付保している”なんて強弁する人がいますが、これは誤りです。

確かに施設賠償特約で被害者の経済的損失はカバーできるのでしょうが、被害者が身体的にハンディキャップを負ってそれからの人生を生きていかなくならなくなった、というものまでを補填できるものではありません。

事故を未然に防ぐのが何よりも1番大事です。

ちょっと前にバルコニー調査を行ったマンションで、多くの住戸でバルコニーがぐらつきます。

住民によれば少しの風でグラつき音がしてウルサイ、とのことです。手摺を揺らしてみると前後に1㎝以上動きます。バルコニーがグラつくなんて初めての経験です。

また、手摺本体を取り付けている2本のビスが見当たりません。脱落して下に落ちてしまっています。このような住戸が10数戸あります。驚愕です。このマンションは竣工後まだ10年経過しておらず、それでこの有様です。

“築後3年目くらいでビスが抜け落ちて管理人さんに付け直してもらった”という住民さんもいました。

これは明らかに施工不良であり瑕疵やアフターサービス期間とかとは全く次元の異なるものです。

そもそも落ちたら危険な場所に、経年で緩んで抜け落ちる恐れのあるボルトやビスを用いる感覚が理解できません。

売主、設計士、施工業者、実際に取り付けた職人さんのうち誰一人もオカシイと思わなかったのでしょうか?

たまたま運よく、事故にならなかったものの、もし抜け落ちたビスが通行人に当たりその方がハンディキャップ負うことになっていたら管理組合が責任を負うことになっていたでしょう。

管理組合に何の責任がありますか?施工不良のせいで、第3者に損害を及ぼして、その責任を管理組合が負わなきゃなんないの?

もっとよく考えて施工しなきゃ、です。