マンション管理士の独り言・・・1211
「共有関係の掘り下げ」
多くの管理組合さんは3月を年度末にしていますが、今月末で総会ラッシュが一息つきそうです。
何かの修繕工事を実施し、その費用に修繕積立金を充てる場合は、議案に「その費用は修繕積立金を取り崩して充当します」としなければなりません。
修繕積立金の取り崩しは総会の承認事項となっているからです。
また、その用途も大規模修繕工事時などに限定されています。
なかやしきさんのマンションでは、「理事長は緊急を要する時には修繕積立金を取り崩すことができる」としていますが、あまり褒められたものではありません。
このような場合は予め管理費に予備費を計上しておいてそこから支出するってことをおススメします。
管理費=一般会計、修繕積立金=特別会計として経理されます。
この修繕積立金は、前回つぶやいた共有の分類では、「合有」とされます。
「共有」のように個人の持ち分と言うのが概念されておらず、マンション管理組合全体での持ち物となります。
従って、“マンション購入して第1回目の修繕工事が実施される前に転居した、修繕積立金は全く使われていないのでタップリ残っている”からと言って、それまで積み立てた分の清算などは要求できません。そのように規約に規定されています。
引っ越しのたびに清算していたら積立金は予定通りキチンと貯まらなくなってしまい、管理組合の経理も健全でなくなります。
更に、管理規約には転居した人から購入した人(特定承継人)が、前所有者の権利義務を引き継ぐと規定されています。
修繕積立金を組合員間で分配できるのは、マンション建物が壊れて共有物がなくなり、共有関係が崩壊したときに限り専有面積割合で分配されます。居住年数などは考慮されません。
まれにマンション管理組合にも収入がある時があります。代表的なのが保険金収入です。
マンション共用部に損害が生じたときや雨漏れ事故が発生したときに管理組合で付保している保険から給付されるものです。
「マンション管理組合で付保している保険だから保険事故あった際の保険金は、当然にマンション管理組合に入金される」と思っているかも知れませんが、これは半分正しく半分間違いです。
保険金収入は可分債権(頭割りできる債権)なので、本来は組合員へ専有面積割合で分配されるべきものです。
しかし組合員へ少額ずつ分配してしまったら、損害を被った個所の補修が行えないという不都合が生じます。
このため管理規約で、「理事長は保険金受領について組合員を代理する」として、全額を管理組合へ収入しているのです。
マンション屋上に立っている携帯基地局からの収入も組合員へ専有面積割合で分配すべきものですが、総会で修繕積立金などに入金するとされます。
近年、税務署がこの携帯基地局収入に対して管理組合に過去5年に遡って課税していますが、少々筋の悪い手法です。
携帯基地局収入も可分債権なので本来ならば、管理組合へではなく組合員へ課税すべきものと考えます
❝可分債権である携帯基地局収入を管理組合が勝手に納税した❞って組合員から訴訟を起こされたらどうなるのでしょう???
マンションは組合員間で共有関係となるので、資産、支出、収入などややこしくなってしまいます。