マンション管理士の独り言・・・1278

マンション管理士の独り言・・・1278

「上下階騒音トラブルについて 外壁工法」

北九州のマンションの外壁の作り方はGL工法が一般的です。

GL工法と言うのは、石灰を主成分とした接着剤を小さなこぶしくらいのダンゴ状に丸めてコンクリート面に点付けし、その上から石膏ボードを貼り付ける工法です。

部屋内側ではこの石膏ボードにクロス貼りという仕上げです。

壁仕上に多少の凹凸があってもダンゴ接着剤を付けることで容易に平面化できて、ローコスト・短い工期・作業がしやすいなどの点で北九州では広く取り入れられています。

しかし、ダンゴ状の接着剤の分だけコンクリート面とボード面に空間が作られるため、断熱性能は期待できるものの、遮音性能に関しては共振(タイコ現象)が生じることとなります。

また、ダンゴ接着剤は、時間の経過とともに乾燥し、モルタルの様に硬化して固体音をダイレクトに伝播することになります。

GL工法では、特に側路伝播音(空気伝播音)が問題になります。

側路伝播音とは、2つの住戸の壁や床からの透過以外の経路をたどって伝播する音を指します。

石膏ボードがダンゴ接着剤により点付けされているため、振動しやすく250~500hz付近の音で共鳴・共振現象が生じやすくなり、遮音性能が大きく低下することがわかっています。

2重床+GL工法の場合、外壁の内側には空洞があり、床下にも空洞があり、音を伝える空気が通る空洞が住戸全体を取り囲んでいることになります。

さらに床がボイドスラブの場合、中空になっているためここも多少ですが空気の通り道になります。

またボイドスラブは在来スラブと比べ軽量のため小梁をなくすことが出来、これは上階の床面積が広がることに通じ、遮音性能低減に拍車をかける結果となります。

空気伝播音の対策としては、空気の通り道を遮断することで効果が見られます。

隙間をふさいだり、防音材を施工することが有効ですが、何よりも施工ゼネコンさんや設計監理の建築士さんは施工段階から細心の注意を払って適正な工法・仕上げとなるようにしなければなりません。

これに対し子供の飛び跳ね音に代表される重量衝撃音は、床コンクリートスラブの厚みを増やすなどして、床構造をもっと遮音性能に高いものにしなければなりません。

現在の様な20mmパーティクルボード+12mmフロアー材という2重構造だけでなく、防振マットなどを更に引き込んで3重構造、4重構造としなければなりません。

最近特に上下階騒音トラブルが持ち込まれることが多く、その原因について研究してみました。ただ単に床コンクリートのスラブ厚だけが原因でなく、スラブの種類や床仕上げ方法、さらには外壁の構造にまで騒音発生原因が考えられるため、非常に厄介な難解な問題です。

また、売主さんが竣工後に騒音測定していない事にも大きな問題があります。

測定していれば、「パンフレットに載っている通りLL45の遮音性能が確保されています。」と大きな声で言えます。

例えば「プリウスを買ったのにレクサスの性能を求められても困ります」ということが出来るのです。ところが、騒音測定していないがゆえに「プリウス買ったのにビッツの性能しかないじゃん」と購入者が疑心暗鬼になっていることに端を発しているのです。

騒音測定器が大活躍です。これってあまり喜ばしい事じゃないよ・・・、です。

ビッツ持ってる人ゴメンナサイ。