マンション管理士の独り言・・・1285

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「旦過市場の火事」

長年小倉に住むものとして旦過市場の火事には衝撃を受けました。

10年以上前でしょうか、市場の下を流れる神嶽川の氾濫の際にも驚きましたが、今回はその比ではありません。

120もの店舗が軒を連ねていますが、そのうちの40以上の店舗に被害が及んでいるようです。

人への直接的被害がなかったのがせめてもの救いです。

旦過市場では令和2年度に旦過地区土地区画整理事業が開始され、令和9年度の竣工めざし再開発計画が進んでいました。

令和3年7月には、宅地所有者+借地権者+学識経験者で土地区画整理審議会も発足したばかりだったのに、事業の大幅な見直しは避けられそうもありません。

文字通り北九州の台所です。早く復興を遂げてもらいたいものです。

何度もつぶやくように旦過市場はマンションです。

マンション法と言われる区分建物所有法がイメージしているど真ん中の建物です。

独立した複数の専有部分(店舗)があり、外壁や屋根などが複数の専有部分所有者で共有されている建物です。

ただし旦過市場がややこしいと思われるのは、通常のマンションの様に、専有部分所有者がその専有部分の面積に応じて敷地の所有者という場合のみではなく、専有部分を借りている借地権者が沢山いることです。

また、実際に権利関係を調べたわけではありませんが、専有部分を持っていないのに敷地の共有者であったり、反対に敷地の持分のない専有部分所有者がいることが想像されます。

この他、地上権を持っている人や専有部分を持っているが何代にもわたって相続登記がなされておらず、権利者が沢山存在するって専有部分もありそうです。

旦過市場は区分所有建物ですから、再開発(建替え)に際しては区分建物所有法を順守して実施されることになりますが、建て替えまでには気の遠くなるような作業が必要になることが予想されます。

今回の火事ですが、被災者はそれぞれ火災保険に加入していることと思いますが、旦過市場全体として、つまり旦過市場管理組合として外壁や屋根など共用部分の火災保険を付保していたのでしょうか?

そもそも共用部分を管理するための管理組合はあったのでしょうか?

外壁や屋根などを共用部分として規定している規約などは存在したのでしょうか?

各店舗がそれぞれ保険金を受領しても、自分の店舗のみの補修に消費してしまえば、外壁や屋根などの補修に割けるお金が無くなってしまいます。

通常のマンションの場合は、共用部分の被害による損害保険金の受領は理事長が代理して受領すると規約に記載されていますが、どうなっているのでしょう。

火事では賃借権はなくならないので、建物が滅失して借地権者の権利は残りそうです。

再開発の前に、今回の火災により火災保険受領などで、その対象・給付割合・受領金額などで難しい方程式を更にもう一つ解かなければならなくなりました。