マンション管理士の独り言・・・1286

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「旦過市場の復興を願って」

前回に続き、早期の完全な「旦過市場の復興を願って」今回の火事について掘り下げます。

前回もつぶやきましたが、旦過市場は区分建物、いわゆるマンションです。

従って復興に際しては少なからず区分建物所有法(略称:区分所有法)の特に61条が関係してきます。もし旦過市場独自の管理規約があればそれに従うことになります。

各専有部分(店舗部分)についてはその区分所有者の責任と負担で復旧させることとなります。実際は公共団体などの援助を得ながら付保している火災保険金などを利用して復旧させることとなると思われます。

問題なのは外壁や屋根、柱、梁などの共用部分の復旧です。しかも今回は全部が無くなっているのでなく一部の消失です。これは厄介です。

区分所有法第61条では、建物の2分の1以上が滅失したかどうかで扱いが異なっています。

2分の1以下の場合は、復旧には2つのパターンがあります。1つ目は各区分所有者が独自で共用部分の復旧が出来ます。

そして復旧に要した費用を他の区分所有者に持ち分割合に応じて償還請求することができると規定されています。

これは、滅失した部分の復旧工事は同法第18条1項に規定された保存行為と解釈していることから派生したものと考えられます。

しかし、区分所有者が単独で復旧工事を行った場合、それに要した費用が適正だったかどうかが後々問題になることが懸念されますので現実的な対応とは思われません。

また今回のような大規模被災の場合、復旧には多額の費用が必要となりますので区分所有者が単独で復旧するというのは考えらません。

2つ目の方法は同法61条3項に規定されているもので総会を開催し、滅失した共用部分の復旧の決議を得るというものです。この決議は普通決議で行われます。

2分の1以上が滅失した場合は、上記2つの方法は執れません。必ず総会を開催して4分の3以上の賛成が必要な特別決議での採決が求められます。

標準管理規約でも、この2分の1ルールは適用されています。

第48条十一では滅失率2分の1以下ならば普通決議、2分の1以上の時は、第47条3項の四で特別決議とされています。

特別決議と普通決議の違いは、ただ単に2分の1以上、4分の3以上ではありません。

普通決議は総会出席者の過半数承認ですが、特別決議は議決権総数の4分の3承認です。

特別決議承認のハードルはとても高いのです

復旧計画に反対の区分所有者は、特別決議を求めるでしょうし、何とか可決させたいと考える区分所有者は普通決議を望むはずです。120戸のうち40戸程度が被災したというのが厄介です。

また、総会を開催する際に、参加できるのは基本的に議決権を有する区分所有者ということになりますが、旦過市場の場合、店を借りて営業している賃借人が多数存在すると考えられます。この方の意見をどのように吸い上げるのか?も考慮しなければなりません。

また誰が2分の1以上と判断するのか?どのような基準で判断するのか?面積なのか?被災状況なのか?経済的損失なのか?など見解が分かれることが懸念されます。

普通決議であっても特別決議であっても、復旧費用は各区分所有者が負担している修繕積立金からの支出となりますが、被災していない部分の区分所有者からの理解は得られるのか?も懸念事項です。

懸念事項だらけです。とても難しい方程式を解かなければなりません。法に則って方程式を解いたとしても、次に合意形成と言う大きな壁が待ち受けます。

旦過市場の火事と言うのは、一軒家の火事とは大きく異なります。