マンション管理士の独り言・・・1287
「机上の空論。こんなの出来っこない・・・その2」
前回に続いて、理屈的にはわかるけど実務的にはこんなの出来ないよってことをつぶやきます。
管理規約の改正です。これは何度もつぶやくように、区分所有法の強行規定ですから、そのマンションの管理規約とか総会の決議で任意に変更することはできません。
要件を変えようとすれば法律(区分所有法)の変更をまず先にやんなきゃ、です。
現在の管理規約変更の承認要件は、議決権総数及び区分所有者数の4分の3以上の賛成が求められます。
この4分の3と言う数字を、イジってはいけません。
「しっかりした規約が出来たから変更しにくいように5分の4にしよう」或いは「その時々の状況に柔軟に対応できるように3分の2にしよう」のどちらも無効です。
4分の3という数字はアンタッチャブルです。
「過半数の承認(2分の1)で可決される普通決議と比べて、そんなにハードル高くないじゃん」と思う人は勉強不足の素人です。
普通決議は、総会参加者の過半数です。
仮に100議決権のマンションの総会では、実出席者+委任状提出者+書面行使者の3つを合わせて50集まれば有効に開催されたとなります。
普通決議は、議決権総数100に対してではなく出席者50に対してですから、最低の場合26で可決となちゃいます。
これに対して規約改正の特別決議は、総会への出席者は関係なく、あくまでも議決権総数の4分の3ですから75以上の承認が必要なのです。
普通決議と特別決議とではその承認要件が大きく異なります。
実務的には、この管理規約改正はなかなか難しいのです。
先ず、総会参加者が4分の3集まりません。4分の3集まらない状態では、規約改正案は否決です。
ただでさえ築年数の経過したマンションでは4分の3という組合員が集まらないのに、それに追い打ちをかけるようにこのコロナ禍です。
ますます総会参加者が減少傾向になっています。
現行有効な管理規約は、マンション購入者が皆で集まって議論して決まったものではありません。
分譲当初、売主さんや管理会社さんが、自身の経験やノウハウを基にして原案を作成し、それをマンション購入者が承認したものです。
その後実際にマンションライフを経験し、より生活にあったものにしようとしても4分の3と言う特別決議が高いハードルとなります。
組合員の中には、規約改正について大いに関心ある人ばかりではありません。どっちでもいいや、全く興味がない、という方も少なからず存在します。
そういったいろんな考え方がいる人の中での4分の3以上の承認とはかなりハードルが高いってことを身をもって感じています。そう少しハードルを下げてもらえないかと願うばかりです。
日本の国政のベースとなる日本国憲法だって両院の3分の2以上の賛成で良いのです。
そのあとに国民投票はありますが・・・。
仮にも日本国のことを考えて、志をもって国家議員になった方々ですから憲法改正について興味がないわけがありません。その中での3分の2です。
全く興味がない、どっちでもいいや、って方が存在する管理組合での4分の3の承認を得ることが、いかに難しいか、わかるでしょ、です。
コロナ禍での総会で、管理規約改正はかなり難しい。とても難しい。