マンション管理士の独り言・・・1299

マンション管理士の独り言・・・1299

「外野の雑音」

火事で被害にあった旦過市場の復興を目指して立ち上がったクラウドファインディングの募集受付が先日終了しました。これは旦過市場商店街が加盟している小倉中央商業連合会が主催したもので、目標の1000万円の5倍以上の55,459,718円が寄せられました。主としてガレキ撤去に使われるようです。

これだけ多くの寄付に対して主催者のお礼がテレビで流されていました。

ほんの短いコメントでしたが、その中に「・・・総会で話し合って・・・」という言葉が出ていました。

“これだけ多額の浄財なんだから使途は明確にしなければならない”という主催者が感じているプレッシャーは相当なものだと思います。

そのために総会を開催し、皆の意見をよく聞いて公平で透明性を確保しながら発注先や撤去範囲など詳細を決めようとしているものと思われます。えっ?

総会って開催されるの?それって民主的なもの?旦過市場商店街の意見を表すものなの?旦過市場商店街はじめ多くの権利者の納得が得られるものなの?総会が開催できる法的根拠あるの?一人が何票持ってるの?店舗営業してる賃借人にも議決権あるの?って疑問だらけです。

マンションならば区分所有法により管理組合が設立され、購入者は例外なくその組合員となります。法律上当然に組合員です。

組合員一人が何票持っているかという議決権は、原則専有面積に比例します。

従って50㎡の住戸を買った人の議決権が1票ならば100㎡を買った人のそれは2票となります。

もっとも最近のマンションでは面積に関わらず1住戸1議決権としているところが多いのですが・・・。

標準管理規約の見解では、面積差がそれほどない場合は同じく1票でいいってされていますが、面積差が1,5倍以上あって同じく1票ならば無効だというのが多数説です。

また、仮にご夫婦が半分ずつ出し合って住戸を購入した場合であっても、0,5票ずつとはならず、2人で1票となり、どちらが議決権を行使するかを予め届けておくことになっています。マンションの場合は、全員が区分所有者だから整理がつくのです。

旦過市場商店街の場合、権利者はいくつものパターンが考えられます。

土地建物の所有者でありかつ自分で店舗営業している人、土地のみの所有者、土地を借りての建物の所有者(地上権か賃借権か、使用貸借か)で自分で店舗営業している人、建物の所有者だけど自分では店舗営業していない人、建物を借りているだけの賃借人などです。

更に土地や建物の所有者が亡くなっているが適正に相続登記がなされておらず、相続人が多数存在する、所有者は個人でなく法人、など考え出せばきりがないほど複雑で難解な権利関係が存在するはずです。

その人には何票の議決権が与えられるのでしょう?土地建物の所有者でありかつ自分で店舗営業している人が1票ならば、建物を借りて営業している賃借人に何票なのでしょうか?

もちろん議決権付与に際しては店舗の規模面積も考慮しなければなりません。

マンション管理組合のように理事会が存在し、そこで議案を作成し、総会に提案するという方法を取らないと総会では議論が紛糾することが目に見えています。

総会では「理事会で共通仕様書でABC3社から見積もりを取りました。金額や会社の信用性や実績を検討した結果、A社に発注すべきとなりました。A社に〇〇の内容で、△△の金額で発注することをご承認ください」と提案しなければ紛糾します。「ABC社のどれにしましょうか?」とやるとA、B、C社のみならずD社まで出てきて話がまとまりません。

マンションでは管理規約で総会議案を理事会が作成することになっており、組合員はそのことを承認しています。

この様な手続きが旦過市場商店街でなされているのでしょうか?

考えただけでも長い道のりです。旦過市場商店街の復興はハッキリ言ってつぶやき主には可能とは思えません。