マンション管理士の独り言・・・1376

マンション管理士の独り言・・・1376

「玄関ドア取替え」

住戸に付いている玄関ドアは、共用部分です。専有部分ではありません。

マンションエントランスについているオートロック自動ドアは共用部分(区分所有者全員の共有)というのはイメージできると思いますが、その住戸に付いている玄関ドアも共用部分です。

何故かって言うと、多くの人の出入りがあるマンションでは、もし住戸で火事が発生しても廊下階段へ燃え広がらないように耐火仕様の玄関ドアを用いるよう定められています。

その人のモノ、つまり専有部分にしちゃうと“こんなスチール製の玄関ドアは気に入らないから木製の高級ドアに変更する”って言われたときに“ダメですよ”って言えないからです。

木製ドアに変えられたら、住戸での出火が延焼するおそれがありますから、管理組合としてはこれは断らなければなりません。

その断る根拠が共用部分の専用使用部分という扱いなのです。

因みに標準管理規約では玄関ドアで専有部分(つまりその人のモノ)なのは、鍵と内側塗装部分だけとなっています。

共用部分なので住戸の玄関ドア取り換えは管理組合で実施することとなります。

新築後25~30年で行われるのが一般的です。

妻住戸は風が当たりにくいので、中住戸に比べてそれほど劣化が進行していないので合意形成には苦労を要します。

“うちはまだ変えなくていい”ってご意見が必ず出されます。

ちょっと乱暴な言い方ですが、全戸一律で悪くなってくれればいいのですが、まだらに劣化が進行しているので合意形成が厄介です。

取替えの方法は、大きく3つあります。

玄関枠から総取替え。この方法は、コンクリート躯体から枠を取り外すことになり、費用も戸当り100万円を楽に越しちゃいますし、工期もかかり、また騒音振動も激しく発生します。工法的には可能だけど、現実的には無理のある工法です。

続いては、現在の枠を利用して玄関ドアだけを取り換える方法です。

しかし既存の枠とサイズがあう玄関ドアが見つからなかったり、枠が沿っていたりすると取り換えは出来ません。ほとんど見かけることのない工法です。

最後がカバー工法です。既存枠を利用し、その枠の上にもう一つの枠を被せる方法です。

既存枠の錆を落とし防錆加工を施し、その上から新規の枠を被せる方法です。

一般的にはこの方法が行われます。

被せ工法にも2種類あり、先ずは既存枠の直上に新規枠を被せる方法です。

この工法だと、新規枠分だけ玄関ドアが狭くなっちゃいます。横で約5cm、縦に約3cmです。冷蔵庫や洗濯機が入らない、って苦情に近いご意見が寄せられます。

もう一つのカバー工法は、既存枠の上に外壁側に貼りだして新規枠を設置する工法です。

これだと玄関ドアの寸法が狭くなることはありませんが、外壁から新規枠分(約4cm)だけ張り出すことになってしまいます。見かけはあまりいいものではありません。

また、意匠となる金モールも四角なのか縦1本なのか、ハンドルはレバーハンドルなのかプッシュプル方式なのかによって値段が変わってきます。

アンケートを数度にわたって行うことが必要です。

取替えは結構大変な作業です。