マンション管理士の独り言・・・1389

マンション管理士の独り言・・・1389

「傾き・勾配」

マンションには良い(なくてはならない)傾きと悪い(あってはいけない)傾きとがあります。

マンションには汚水や生活排水処理のため排水管があり、その管内を排水が滞留しないように勾配が設けられています。排水横引き管などですが、これはなくてはならない傾きです。

反対に床フロアー材に傾きがあってはいけません。悪い傾きです。

先ずは、施工精度にもつながる悪い(あってはならない)傾きに関してです。

国交省令では、床フロアー材の傾きに関し、3/1000という基準が示されています。

10メートル先で3cmならば許容範囲ということです。(1mならば3mm)。

また、住宅の品質確保に関する法律(品確法)では3/1000では、瑕疵が存在する可能性は低い。3/1000~6/1000ならば瑕疵は一定程度ある。6/1000を超えれば瑕疵が存在する可能性が高い、とされています。

マンション業界でもこれに準じ、3/1000ならば施工精度の範囲内であるとして、特に手直しなどを要求しないのが暗黙の了解になっています。

次に良い(なくてはならない)傾き(勾配)です。排水管の勾配です。これにも管内に排水水が滞留しないように基準が設けられています。

管径65mm以下ならば1/50。(50cm先が1cm低くなっている。)

~100mmで1/100。200mm~で1.2/100です。この勾配を確保しないと、生活雑排水がスムーズに流れないこととなります。

また、管内流速は、0.6~1.5/秒と定められています。

当然ですが、生活する人数によって管径の太さも異なっています。

更に管を土に埋め込む際にも、凍結防止のため20cm以上の深さに設置しなければならないとされています。(北海道では、これ以上の土被りが必要)

もう一つなくてはならない、しっかり確保しなければならない勾配です。これは施工精度にも関連してきますが、バルコニー勾配です。

バルコニーについても性能保証住宅設計施工基準により勾配が決められています。

1/50です。50cm先が1cm低くなっていなければなりません。(1mならば2cm)

これ以下だと、雨水が滞留し、防水層の劣化を早めることにもつながります。

また、水が集まる排水口付近(ドレン回り)の勾配は1/100という基準になっています。

要注意なのが、新築マンションの場合、サッシュ下端からバルコニー手摺下部の排水溝までの勾配は確保できているけれど、床に貼っている防滑シートが途中で盛り上がっていて、その盛り上がり部底に雨水が溜まってしまうという現象がよく見られます。

常に水が溜まっていて、コケが生え見苦しく、また滑りやすくなってしまいます。

この他、マンション敷地内の駐車場床や歩道の雨水排水勾配、更には屋上防水の勾配、解放廊下の勾配もしっかり確保されていなければなりません。

また、エアコンドレン水の処理に関しても十分な勾配の確保が必要です。

マンションの良い傾きと悪い傾きのお話でした。