マンション管理士の独り言・・・178

「マンション販売価格値下げ訴訟」

先週日曜日に開催した「1から学べるマンション購入講座」からのお問い合わせへの対応などで、独り言を少しさぼりがちだったので精力的にアップしていきます。
昨日の朝日新聞の朝刊に、小倉北区の「サンモリッツ霧が丘」の住民が入居後半年の転売や値下げで資産価値が下落したとして分譲会社へ合計約1530万円の損害賠償請求訴訟をおこしたという記事が掲載されていました。
これと同様の裁判例を掲載した業界紙がありましたので、ご紹介します。
「1団の建売住宅6棟のうちの1棟を5480万円で購入したが、そのわずか2カ月後に同じタイプのものが4980万円で売買された。分譲主に損害賠償を請求したい」という質問に対し、弁護士が回答しています。

判例では
①建売住宅の販売行為は売主がその財産を処分する行為であり販売価格の設定は、本来売主が自由に行えるものである。売れ行きや・市況変化・事業資金の返済の遅れ・金利負担等を考慮し販売価格を値下げする事も合理的な財産の処分であり、原則として売主が自由に行う事ができる。
②建売住宅の購入者が、今後も購入価格と同一の価格が維持されると期待を抱く事は自由だが、売り主は購入者に対し信義則上の価格維持義務を負うというわけではない。

しかし、これに対して例外的に売主に損害賠償責任が生じる場合についても言及しています。
①値下げ後の価格が市場より著しく低廉なもので、この事により先に販売されたと同様の建売住宅の資産価値が市場の相場より大きく下回ったと認められる場合
②購入した建売住宅と同様の物件が、今後も売買価格と同等の価格で販売され続けるであろうと期待を抱かせるような言動が売買交渉の過程で売り主側に認められる場合。

この事案では、原告となった購入者も販売価格を5680万円から5480万円に値引きしてもらっており、このことは売主は販売価格について柔軟に対応する態度であると推察でき、ひいては値下げの可能性を示唆する事実と推定できるとしました。

ここからつぶやき主の、情報収集能力の見せ場です。
つぶやき主は、いろんな売主の最近の売買契約書や重要事項説明書を保管しています。
捜しました。ありました。見つけました。
A社の重要事項説明書には、「買主は売買契約締結後、事業環境、経営環境が変化した場合に、売主が本物件の販売方法、諸条件等の事業方法を変更する場合があることを予め了承する事。」
B社の売買契約書には、「複数棟ある分譲地においては販売期間が長期にわたるため、市住宅市場の変化及びその他の事情が予想されます。そのため、本物件を除く物件については、販売状況により販売価格を変更する場合があります。」

このようにキチンと記載されていれば、「サンモリッツ霧が丘」の原告の方はアウトだったのでしょうが、おそらくこのような記載はなかったと思われます。
すべての売り主が、将来値引きを行うことの可能性を隠して、売買契約書などに記載していないというわけではありません。
将来の値引きの可能性にも触れた売買契約書も存在する事を教えてあげちゃいます。
また、購入時に値引き要請を行ったに拘わらず値引きが行われなかったという点も有利に働くことと思います。

推移を興味深く見て行こうと思います。