マンション管理士の独り言・・・181

「国交省への提言」

国土交通省は、今年7月29日~8月31日までの間で分譲マンション政策に関する意見募集を行いました。その結果が先日発表されました。96人から327件が提出されたそうです。
つぶやき主も、怖れ多くも“お上”に対し、意見を提出しました。
多分、おそらく、きっと、間違いなく、絶対に採用されないと思いますから、全文を公開します。

今後のよりよい分譲マンション政策に少しでもお役にたてばと、意見させていただきます。
小職は、北九州でマンション管理士事務所を開業しているものですが、マンション管理についての問題を考えるには、入り口論=つまりは分譲時の適正な販売方法やキチンとした管理規約などが、以降の管理運営には必須です。
実例を挙げてご説明します。

①駐車場使用料が無料
現在顧問として管理組合活動にアドバイスをしているマンション(築2年 111戸)では、駐車場が大きく3種類あります。
1つ目が、ピロティを利用した屋根付きとも言える平面駐車場
2つ目が、敷地内で屋根のない平面平置き駐車場
3つ目が、地下1階、地上3階の機械式駐車場
この3タイプの駐車場があり、問題なのは駐車料金がすべてタダということです。
第1回目の総会の時点で大紛糾しました。
誰だってピロティ下の屋根付き平面駐車場が1番良く、機械式駐車場の地下か1番上が最悪の場所だと思っています。

分譲時に営業マンは屋根付き平面駐車場のかたには、「未来永劫駐車位置は変わりませんよ」と言い、他方で購入時期が後の方で機械式駐車場になった購入者に対しては、「暫定的な措置で、何年かおきに抽選で場所変えします」なんて言っています。
最終的には、場所ごとに金額差をつけるしかないと考えていますが、意見調整には5年~10年はかかると考えています。
その間、入居者の間では人間関係がギクシャクするのは目にみえています。全く罪作りな売り方です。

②未販売住戸の管理費や修繕積立金を分譲主が負担しない。
北九州では、大手の参入がないために地場分譲業者は、管理に対して低いレベルだと言わざるを得ません。
また、北九州では、平均的なマンションの売れ行きは建物竣工事に50%も売れていれば良い方で、多くは竣工時30%、竣工3年で完売なんていうのが普通の販売推移です。
この間の管理費・修繕積立金を多くの売主は負担しません。
「竣工時に未販売住戸があったとしても売主はこれを負担しません」と重要事項説明書に明記しています。
購入者は、このような取り決めが適切かどうかなんてわかっていません。
また、他のマンションではどうなのかを調べる術もありません。
要するに何もわからないままに、売主が用意した契約書にサインしている状況です。
明らかに建物劣化がすすんでいるのに、修繕積立金が不足し1時金を負担できなくて、過半数の賛成が得られずに大規模修繕工事が実施できずに、スラム化していく、というマンションが、北九州では今後すごい勢いで増えていくことが予想されます。

③分譲駐車場問題
これも北九州特有の悪しき分譲方式ですが、相変わらず分譲駐車場を売りだしています。
そもそも敷地全部を購入者に売っておきながら、何の権利(駐車場使用権という債権らしい?)で販売しているのか、よくわかりませんが、実際の管理組合活動ではとても困ります。
駐車場維持管理費の負担割合や、なにより本来管理組合の修繕積立金に充当されるべき駐車場使用料が入金されないので、大規模修繕時に積立金の不足が生じ、これも前述の通りマンションスラム化を招く一因になります。
また、最近では分譲代金が償却できれば、分譲駐車場も徐々に有償化できるような傾向にありますが、これも多くの場合マンション居住者でいがみ合って、裁判での決着となる場合が多いようです。
居住者同士がいがみ合う事が、それ以降の管理組合活動に支障とならないわけがありません。

④管理規約や長期修繕計画などの重要書類の内容が適当なものが多い
管理組合の修繕積立金を自社の社債に運用させたまま、倒産してしまった丸美の管理規約には、マンション管理士などの専門家の活用という項目が故意に除かれていましたし、売主や管理会社(売主の子会社である場合がほとんど)の都合のいいように書かれているものを散見する機会が多くあります。
長期修繕計画に到っては、当初の積立金額を意図的に低く設定し、販売の足を引っ張らないようにしているものがほとんどです。
売主が分譲時に提示する長期修繕計画は、正確性にとても疑問があります。

⑤いい加減なセールストーク
一方の購入希望者には、管理規約にはペット禁止でありながら「ペット飼育できますよ」とつぶやき、ペット嫌いな購入希望者には「管理規約にはペット飼育禁止となっています」なんてつぶやいて購入へ導いた結果、管理組合総会では、少数のペット飼育者がやり玉にあがります。 
そして、3件の方がマンション購入して半年も経たずに転居したという悲しい出来事が北九州でも近年、実例としてありました。
 楽しい生活を夢見てマンションを購入したのに、当事者皆が傷つく悲しい出来事です。

我々マンション管理士が出来る事というのは、たかが知れています。
マンション分譲時にいい加減なセールストークや販売手法、あるいは正確性を欠く長期修繕計画や売主・管理会社に一方的に都合のいい重要事項説明書・管理規約などで販売されると、適正な管理運営に戻すまでに大変な時間と労力が費やされます。
問題次第では、適正な管理運営にたどりつかない場合だって沢山あると思われます。
いいかえると、分譲当初にこれらの事が、適正に・正確になされていれば、そのマンションでは適正な管理へ道のりはそんなに困難が伴わないでしょう。
マンション管理は、管理組合が発足してしまってからでは、遅すぎます。
マンション分譲時に適正・正確な販売方法を行うように売主が襟を正す必要があります。

いいこと書いてるっしょ。