マンション管理士の独り言・・・225

「売られないようにするために」

何を売られないようにするのかって言えば、マンションの敷地です。
前回からの続きですが、特に昭和58年以前に建築されたマンションの敷地は、売られないようにしなければなりません。
日本の不動産登記では、建物と土地とはそれぞれ別の不動産として登記の対象となります。ですから、他人の所有として登記されている土地の上に、土地所有者とは異なる人の所有建物が存在していることは当たり前のようによく見られます。
他人の土地を借地して家を建築するとか、親の土地の上に、子供名義の建物を建てるなどがそうです。
これはマンションについても同様です。
このため、以前はマンション建物の専有部分は所有したまま、敷地の共有持分だけを売却することができたのです。

しかし、このようなことが頻繁に行われると、マンションの権利関係が複雑化しますし、何より管理面で大変です。
建物専有部分を所有していなくて、敷地持分だけを所有している人には議決権を何票与えるのか、など扱いがとても難しくなってしまいます。
そこで、管理規約に建物専有部分と敷地の持分とを切り離して処分(売買など)をすることを禁止するとともに、昭和58年の区分建物所有法の改正により、マンションという建物部分と敷地の持分と一体化した敷地権という登記がなされるようになりました。
この改正により、昭和58年以降のマンションでは、それぞれを切り離して売却することは事実上不可能になっています。

では昭和58年以前のマンションはどうかというと、意識の高いというと語弊があるかもしれませんが、しっかりとした管理組合活動がなされているマンションでは、総会でマンション敷地を敷地権登記することを決議し、司法書士に依頼して敷地権登記を行い、またこれに併せて管理規約も専有部分と敷地の持分とを切り離して処分してはならない、と改正してそれぞれを別々に処分できないようにしています。

ですが未だに敷地権登記をしていないマンション管理組合の何と多いことか。
法務局に確認しましたが、法務局では申請がない限り、敷地権登記などは行いません。
職権で法務局が、あるいは国がなんとかしてくれる、なんてのはありません。
また、敷地権登記されていないマンションで専有部分と敷地持分とを切り離して所有権移転の申請があれば、受理してその申請通りに登記を行うとのことです。
つまり昭和58年以前のマンションで総会の決議を経て敷地権登記を行っていないマンションでは、今でも専有部分と敷地持分とを切り離して所有権移転登記ができてしまいます。
そんな権利関係が複雑化したマンションは誰も買いませんし、相続でもらっても困るだけです。

あなたのマンションでは、もう敷地権登記していますか?
それに併せて管理規約改正していますか?