マンション管理士の独り言・・・229

「新築物件の選び方・・・その②」

前回に続いて新築マンションの選び方です。
今回は長期修繕計画についてつぶやきます。
長期修繕計画と聞くと、“専門的すぎてわかんない”と思われるかもしれません。
その通りです。
素人の方が簡単にわかってしまうとマンション管理士の商売あがったりです。
今回は、長期修繕計画の内容ウンヌンという難しい話ではなくて、マンションを購入しようとする際に、長期修繕計画の提示があるかないかを言っています。

マンションを購入する際には、宅地建物取引業法により購入者に対して宅建主任者が免許を提示して重要事項を説明しなければなりません。
そして残念ながら、説明しなければならないものの中に長期修繕計画は入っていません。説明義務はないものの、重要事項説明時か遅くとも引渡時には長期修繕計画を提示する売主もあります。
これに対して、全く長期修繕計画を提示しないか、あるいは単に予想される金額だけが書かれた長期修繕計画を提示する売主もあります。

マンションと言うのは新築した時から劣化が始まります。
そして大体15年ごとに大規模修繕工事が実施されます。
この時に1時金が発生しないように多くのマンションでは計画的に修繕積立金を積み立てています。
直近のデータでは、積立金の全国平均額は10,898円です。
新築時に3,000円~4,000円程度の積立金では足りません。

ですから長期修繕計画というのは、15年ごとに予想される修繕費用と、その費用をどのように積み立てていくのかがセットになっていなければなりません。
分譲当初は、月額3,000円ですが、5年目には6,000円に、さらに10年目には12,000円に値上げされます、という計画が必要なのです。

分譲当初から、予め“このように将来的には積立金は値上がりしますよ、”ということを売主から購入者に話してもらっていないと、何年か後の管理組合総会で積立金の値上げが議題として上程されると、決まって“そんな話は営業マンから聞いていない”“値上がりするなら、このマンションを買っていなかった”なんていう方が必ず出てきて紛糾します。
最近購入のご相談があった2件についても、残念ながら長期修繕計画の提示はありませんでした。
“購入前に必ず提示してもらって下さい”とアドバイスし、担当営業マンに強く言うとシブシブ提示されました。

案の定、一つの計画の方は積立金は5年で倍額、10年後に3倍となっていました。
もう一つのほうは、15年後にこれくらいの修繕費用が発生すると記されているだけで、その修繕費用をどのように貯めて行くかについての記載は全くありません。
もっと修繕計画の精度をあげるようにアドバイスしました。

売主からすれば5年後に積立金が2倍になり、10年後には3倍になりますよ、なんて販売の足を引っ張るようなことは、できれば言いたくないというのが、本心でしょう。
しかし、予めそのことをキチンと購入者へ伝えてもらっていないと、管理組合はとても困ります。
総会で紛糾するのが目に見えていますし、最悪の時は修繕積立金が不足し、修繕工事が実施できずにマンションがスラム化することだってありえます。

契約時までに長期修繕計画とそれをどのように積み立てるかの案が提出されないようなマンションはお勧めできません。
特に「今のお家賃と比べて見て下さい」にはご用心を!