マンション管理士の独り言・・・238

「理事長の権限」

某マンション管理組合の理事会で、出席していた専門委員会の委員長から提案が出されました。
なるほどと思える提案でしたが、理事長は判断を控え、“理事会で検討します。場合によっては、総会を開催して承認を得ます。”と答えました。
これに、専門委員会の委員長が噛みつきました。
“理事長なんだから、この場で判断してOKしてよ”“専門委員会の委員長の私にもそれなりの権限あってしかるべきだし、ましてや理事長には責任に見合った権限があって当然だろ”、っていう感じです。

専門委員会委員長の発言はごもっともだし、それなりの説得力ありますが、この場合は理事長の判断が正しいでしょう。
一般的に総会で付託された事以外には理事長には決定権はありません。
理事会にもありません。
たとえば次年度の予算だって理事会はあくまで、(案)を作成するだけで、その(案)は総会で承認を得て初めて(案)が外されて予算として成立します。
それ以外の議案も理事会ではすべて(案)を作成する権限しか持たされていません。

理事会や理事長へ少し権限を持たせようとする管理組合もあります。
通常は、修繕積立金を取り崩す際は、総会での承認が必要ですが、「緊急を要する時は理事長の判断で修繕積立金を取り崩すことができる」とした管理規約もあります。
また、「第3者へ譲渡や貸与しようとする場合は、理事長はその第3者について調査を行い、マンション入居者として不適格と思った時は、その譲渡や貸与の中止を勧告できる」としている管理規約もあります。

個人の所有物である専有部分の譲渡について、“その人に売っちゃダメ。貸しちゃダメ!”
ということを理事長が言えるのか、については議論の分かれるところですが、このように理事長へ権限を持たせようとしている管理組合もあります。

難しいテーマです。
確かに現行の区分建物所有法や標準管理規約は、理事長(=管理者)の責任や義務については厳しく規定していますが、一方権利はそれほど与えられていないと感じます。
これでは、誰も理事長なんてやってられない、と思うのも仕方ないように思えます。
しかし、だからと言って権限を与え過ぎて独裁者みたいになっても困りますし、・・・。

とても難しいテーマです。