マンション管理士の独り言・・・276

「区分所有法と現実とのギャップ」

この9月から、管理業務主任試験の受験生を対象とした講義の講師をやっています。
初めは照れ臭くて嫌だったけど、“先生”と呼ばれるのにも慣れちゃいました。
週2回で1日6時間の講義です。事前の予習が大変です。
6時間の講義なので、3~4時間はみっちり勉強して備えます。

民法から始まり、区分所有法が何とか終わり、今週からは標準管理規約に入りました。
区分所有法の最後の方は、6条違反のいわゆる義務違反者に対する訴訟についてです。
区分所有者の共通の利益に反する行為に対して、行為の差し止め・使用停止・競売請求、さらには占有者(賃借人)に対する明け渡し請求などです。

行為の差し止めは、普通決議で、弁明の機会は与えなくても良い、使用停止や競売請求の時は特別決議で弁明の機会が必要など、覚えなくてはいけない事柄や数字が頭の中を駆け巡ります。フーッ。

何とかこの単元を終える事が出来ました。今度はより難解な、復旧や建替えです。
2分の1以下の小規模復旧は普通決議で、大規模復旧は特別決議、反対者から賛成者に対する買い取り請求。
建替えの場合は、5分の4以上の特別決議で、反対者に対しては遅滞なく再度建替えに賛成するかどうかを書面で聞き、それでも反対の区分所有者には、賛成者から反対者へ売り渡し請求となり、これら買い取り請求や売り渡し請求は形成権で、・・・。フーッ。フーッ。

さらに建替え円滑化法では、4分の3以上の特別決議で定款や計画を作成し、5人以上で市町村経由で県知事へ届け出を出し、その後の権利変換作業では5分の4以上の賛成が必要となり、この権利変換に反対する者に対しては、買い取り請求や反対に売り渡し請求ができて・・・。フーッ。フーッ。フーッ。

おおとりは、団地です。特定の建物を団地管理組合で管理するなら、当該建物の区分所有者の4分の3以上の賛成と団地管理組合の議決権数の4分の3以上の賛成をもって・・・から始まり、極めつけは、団地内の特定建物の建て替えや一括建替えです。
団地管理組合の5分の4以上の賛成でかつ棟当たり3分の2以上の賛成が必要、とされています。フーッ。フーッ。フーッ。フーッ。

過半数とか、3分の2、4分の3、5分の4何て言う数字があっちにもこっちにも出てきます。

しかし、講義を行いながらズーッと頭の隅にあったのは、現実には団地内マンションの建替えなんて行った人は日本にはいないでしょ、ってことです。
大変ですよ。考えただけでも合意形成に多大な時間とエネルギーがかかりますよ。
それだけの時間やエネルギーを消費しても上手く行くっていく保証はありません。
この規定を作成しただけでも大変だったでしょうけど、多分実際には利用される事のない規定になっちゃうと思います。
それでも、試験ですから受講生にはしっかり覚えておいてもらわなきゃなりません。