マンション管理士の独り言・・・308

「駐車料金ゼロ」

現在分譲中マンションでこんなうたい文句のものがあります。
一時期「駐車料金ゼロ」は流行りましたが、やがてすたれて行きました。
また性懲りもなくこんな売り方しているのかと呆れてしまいます。
何が悪いのか、お分かりですよね?

そもそも駐車料金というのは、管理組合を貸主、区分所有者を借主として△△駐車区画を月々○○円で貸し出しますよ、という使用契約を結びます。
そしてその駐車料金は、修繕積立金に充当される仕組みになっています。
国交省では駐車場使用料の帰属先を、毎月消費されて無くなってしまう管理費ではなくて、大規模修繕工事に備えて積み立てられる修繕積立金にいれましょう、としていますが、市内の多くの管理組合では管理費に充当しています。
例え管理費に充当しているとしても、管理組合財産になるのですから、今回は細かい事は言いません。

しかし「駐車料金ゼロ」というのは管理組合に駐車料金が全く入ってこないとなってしまいます。
仮に駐車料金が月に1台8,000円として100台で800,000円。
100台ならば年間になんと10,000,000円というお金が管理組合収入として入ってこない事になります。
第1回目の大規模修繕工事を15年後に実施するとしてその時には150,000,000円という大金になっています。

これだけの大金が入ってこない状態で大規模修繕工事を実施しようとすれば、それまでの積立額では不足し、1時金が発生する事が考えられます。
“1時金が発生するならば、大規模修繕工事なんてしなくていいよ”、となったらスラム化へまっしぐらです。

またこのマンションでは駐車場にも2種類あります。屋根付きと屋根なしです。
誰だって屋根つきが良いに決まっています。
屋根なしを利用している人が屋根つきを希望した時の取り扱いなどで管理組合は苦労するのが目に見えています。
料金に差があれば不公平感はないのですが、全台タダ。もめないわけがありません。

さらに、2台目駐車場も用意されています。これもタダならば、2台目駐車場の抽選に漏れた方は近隣でお金を出して駐車場を確保し、運よく当たった人はタダで駐車できるとなってしまいます。
もう少し言えば2台目駐車場を借りている人がその専有部分を貸したり、売ったりしたらその2台目区画の扱いは“ど~すんの?”ってことにもなります。

はっきり言って、“売ってしまえば後は管理組合さんよろしくね”って感じです。
管理組合はこんな事は解決できません。管理会社もできません。
管理会社はダイイチ合人社ですが、N支店長だってできません。
マンション管理士だってできません。トラブルの種です。
何故、こんなに駐車料金タダに敏感に反応するのかって言えば、今この問題を抱えているからです。
いい加減な売り方されると後で管理組合はとても大変なのを分かってんの?