マンション管理士の独り言・・・319

「未完成マンションの工事現場で職人さんが転落死亡!契約をキャンセルできる?」

不動産業界誌よりご案内します。
Q:新築マンションを工事完成前に購入しましたが、工事中にエレベーターシャフトから作業員が落下して死亡するという事故が発生しました。売買契約を解除できますか?
とういう質問に対して、弁護士さんが答えています。要旨は以下の通りです。

A:完成前に売買契約が成立した、いわゆる“青田売り”マンションの事例です。
契約解除を求める買主の言い分は「売主は買主に対して購入したマンションには安心感・高級感・くつろぎなどの性能・品質・価値を有するものとして、更に、事故による価値の低下のないものとして買主に引渡すべき義務を負うが、この義務を果たせなくなったので、売買契約を解除し、手付金の返還はもちろんのこと慰謝料も払え」です。

これは訴訟まで発展し、裁判所の判断が下りました。
裁判所は、「マンションの場合、売主は完全なものとして引渡し義務を負うが、これは建物や住戸そのものが物理的に瑕疵のないことに加えて、社会通念上、買主がその住戸を買い受けた目的が達せられないほどの瑕疵がある場合(例えばその住戸で凄惨な殺人事件があったなど)、住み心地の良さに重大な影響を与える場合も含まれるというべきです。
本件の場合にこのような瑕疵があったかどうかについて見てみると、死亡事故があったのは、マンション共用部分であり、死亡はしているものの殺人事件等ではなく、当該住戸からは相当離れた場所で発生しているし、この事故はニュースやインターネットで配信されているが、この事故でこのマンションの住み心地が落ちた、資産的価値が下がったなどの風評も流れていないので、社会通念上瑕疵があるとは認められない、として買主の主張を認めませんでした。

これでキャンセルが認められちゃうと、営業マンは辛いっすよね。

今回は単純な事故で、また現場が共用部分であるエレベーターシャフト内だから、キャンセルは認められませんでした。
しかし、もし購入した住戸で発生していたら、もし事故でなく殺人だったら、もし共用部分であっても購入住戸の目の前で発生していたら、もし資産価値が低下するという風評が流れていたら、・・・結果は違っていたかもしれません。