マンション管理士の独り言・・・343

「原始管理規約の呪縛」

マンション購入者には契約時か引き渡し時に管理規約(案)が渡されます。
本当は契約時より前の時点で、出来れば申し込み時に管理規約(案)が渡されるべきですが、今回は何時渡されるべきかについて、つぶやきません。
管理規約(案)についてです。
何故(案)なのか?これがいつ( )が取れて晴れて管理規約として発効するか、です。

管理規約はマンション購入者の入居後の生活のルールとなるものですから、出来れば最初から皆で話し合って作成するのが望ましいのですが、初めて顔を合わす人ばかりで、ましてやマンションで生活するのも始めての方ばかりでしょうし、それに区分所有法のことに詳しい人なんてそうざらにいるはずもありません。
それならば、ある程度の年月が経って、顔馴染みの人も増え、マンションの生活に慣れたころに皆で集まって自分たちのライフスタイルにあった管理規約を作成できればいいのですが、入居が開始されたのに共用部分の使用ルールがないというのもいただけません。

そこで、実務上は、経験のある売主さんとか管理会社さんが(案)を作成し、それに購入者全員が署名捺印を行います。
その(案)について全員が合意した事となり、その(案)の( )が取れて、晴れて管理規約として発効するということになります。
この売主さんや管理会社さんが用意している管理規約(案)のことを原始管理規約と呼びます。
それ以降もし管理規約が実生活に合わなくなったら、4分の3以上の賛成で規約改正を行う事となります。

この原始管理規約は、以前は駐車場区画を売主さんが優先的に使用できるなど、売主さんが有利になる条項をこっそり忍ばせていたりしていましたが、さすがに最近では見かけなくなりました。
しかし、売主さんや管理会社さんに一方的に有利としている管理規約はないものの、何故こんな規定を入れているのかわかんないものが結構あります。
例えば、“専有部分を第3者へ貸し出す時は、管理規約で定められた所定の賃貸借契約書を使わなければならない”、なんていうのはよく見かけます。
この様に規定していながら、管理会社さんは不動産屋さんが独自に作った契約書で賃貸を受け付けたりしています。
これに役員が噛みつきます。「自分たちが作った管理規約なのに、自らそれを守らないのはオカシイ。守れないような規定を初めから作るな」です。ごもっともです。

さらに、“駐車場使用契約を締結できる者は免許保有者でなければならず、免許書の写しを提出しなければならない”、なんていうのもあります。
そして、免許も持ってないけど、来客用に駐車場を確保している区分所有者も受け付けてたりします。
これにも役員さんが噛みつきます。
「管理規約には駐車場を利用する人は免許保有者でしかもその写しまで提出するようになっている。なぜ、あのお婆ちゃんを受け付けたの?規約と違うじゃん」です。

“駐車場使用契約が結べるのは免許書を持っている人に限る”という規定は、それはそれで合理性もあると思われますが、自分たちで作った管理規約を自ら破ってはいけません。守れないような規定ならなら初めから入れなきゃいいのに、って思います。
変な事でまた役員さんを怒らせることになって、また頭を下げています。
自分で自分の首をしめているようなものです。

原始管理規約を作成する時に、本当に必要な規定なのか、守ることが可能かどうかをもっとよく検討してほしいものです。
理事会に出席しても前向きな議論にならず、こんなことで時間ばかり費やされます。
原始管理規約は自分たちで作るのだから、しっかり現実的なものを作成すればいいのに、そんなに難しい事なのかな・・・です。