マンション管理士の独り言・・・351

「管理会社のお勤め」

管理会社は、管理組合から委託を受け、主として共用部分の保存や管理を行います。
さらに、管理規約や総会の決議に基づいて入居者が生活上のルールを守るように指導や啓発を行うことだって業務の一つです。
これ以外にも、管理運営上のさまざまな事柄すべてに関与することとなります。

そんな中、特にこれは重要だけど割と忘れられているものがあります。
それは、理事長はじめ役員さんを守ってあげることです。
守ると言ったって、何もボディガードじゃありません。
役員さんで構成される理事会が執行する管理組合活動に対して法律的根拠を持たせることに始まり、透明性や公開性を確保することなどです。

通常の場合、理事会は総会で定められたことを執行する機関に過ぎません。
反対に言えば、総会で承認されていないことを理事会の判断で執行するのは、保存行為(急を要する漏水補修など)を除き、認められていません。
これを「理事会の判断で行いましょう、大丈夫ですよ」なんて言って実行させちゃう管理会社の何と多いことでしょう。

例えば、予算には計上されていない工事を理事会のみの判断で実行させたり、です。
また、透明性・公開性確保の観点からも首を傾げることだってよく目にします。
あい見積もりを取らずに永年1社だけに発注し続けたり、高額で大事な工事なのに住民から業者募集を行わずに、業者を選定しちゃったりです。
そして、総会の場で、「誰が何の権限で勝手にこんな工事を行ったんだ。」「なぜこの業者に勝手に発注したんだ。あい見積もりさえ取ってないじゃないか」となって役員さんが責められます。

多くの役員さんは報酬もなく、タダ働きです。
このマンションのために良かれと思って、ひと肌脱いで役員さんに就任しているのです。そんな善意の方を、総会で責められるような立場に置いちゃいけません。
決め方がおかしいとか言われて、後ろ指を刺されることがないように役員さんを守ってあげるのも管理会社の大きな役目の一つです。

そのために規約を改正しなければならないのならば改正し、数社からあい見積もりを取ってキチンと公平に決定されているという手続きを踏むようアドバイスすべきです。
その都度臨時総会を開催するのが難しいのならば、「○○の件については理事会に一任する」と予め承認を得ていればいいのです。

役員さんの業務執行について他の組合員からクレームがつかないように、法律的根拠を持たせたり、また事前に総会で一任の承認を得るようにして、役員さんを守ってあげなきゃ、いけません。
そうでないといよいよ役員さんのなり手がいなくなっちゃいますよ。
管理会社が適正なアドバイスを行わずに執行した業務に対し、総会時に他の組合員から「オカシイ」と突っ込まれ右往左往する役員さんを見ると可哀相でなりません。