マンション管理士の独り言・・・358

「普通決議と特別決議」

お世話している管理組合で駐車場の増設工事の話が持ち上がりました。
玄関エントランス横に左右合計10台の駐車場が増設できます。
築20年のマンションなので、緑をふんだんに取り入れていて、エントランス横は植栽スペースです。
今のマンションならば、まず間違いなく駐車場となっているスペースです。

近隣に2台目の駐車場を借りている方からの発案で、1台5,000円として10台ですから月額50,000円、年間ならば600,000円もの大金が修繕積立金に組み入れることができます。
総会で「駐車場増設について理事会で検討を開始する」という議案を提出し、ご承認をいただくところから始め、特に影響を及ぼすと思われる1階の方を中心にして説明会を開催しました。
この間約1年間ついやしました。

そしていよいよ「駐車場増設について」の議案審議です。
植栽を撤去して駐車場を増設するので特別決議となります。4分の3の賛成が必要です。ここでおさらいです。
普通決議の要件は、
① 有効な総会の開催です。組合員の半数以上の出席で総会が有効に開催され、この出席には、実出席+委任状提出+書面による議決権行使の3つが含まれます。
② 出席者の過半数の賛成で承認、です。

これに対して特別決議は、
① 全組合員の4分の3以上の賛成で承認となります。
総会への出席者数などは関係ありません。

具体的に数字で表すと100戸のマンションで1人が1戸ずつ所有しているとしましょう。ですから区分所有者数は100で、議決権数も100となります。
この場合普通決議ならば、100のうち半数以上の出席が総会の定足数ですから、51の出席で有効に開催されたことになります。
そしてこの51の過半数の賛成で承認となりますから、26で議案承認となります。

これに対して特別決議は、出席者数は関係なく、あくまで区分所有者数と議決権数の4分の3以上ですから75ということになります。
とても高いハードルです。

で「駐車場増設について」という議案は敢え無く撃沈です。
普通決議ならば楽々承認されていましたが、4分の3という数字はとても高いハードルということを改めて思い知らされました。

折角議案として提出するのだから、何とか承認いただこうと説明会を何度も開き、掲示物で議論の推移を組合員へ伝えるなど努力を重ねましたが、残念な結果となりました。
しかしこれも管理組合の意思ですから、尊重しなければなりません。
しかし、4分の3というハードルは高いっすね。

4分の3という数字を、承認されやすいように3分の2に下げたり、反対にもっとハードルを上げようとして5分の4にするのも、どっちも無効ですよ。
4分の3という数字は管理組合が任意に扱っていい数字じゃないってことを覚えておきましょう。