マンション管理士の独り言・・・372

「優先順位が違うよ」

小倉北区のAマンションでは大規模修繕工事を行う予定です。
もうとっくに大規模修繕工事をやらなきゃいけない時期なので、それ自体は間違っていません。
設計士に依頼し、建設会社数社から見積もりをとって決めるらしく、見積もり参加業者を募集しています。
このやり方も間違っていません。
しかし、このAマンションに限りこの時期に大規模修繕工事を実施するのはどうかな、という気がしています。

それは、このAマンションが敷地を売られてしまっているからです。

話は30年くらい前の分譲時にさかのぼります。
その時は建築基準法で要求された建蔽率や容積率をクリアーするために敷地を大きく取っていたのですが、建築確認の認可を受けて着工し、竣工。
そして竣工検査で合格したと同時に、敷地の一部を切り売りしているのです。
切り売りされた時点で建蔽率や容積率を満たしていないことになります。
このような建物を既存不適格といいます。
Aマンションはまさに既存不適格建物です。
現地を見ればすぐにわかりますが、バルコニーが隣の敷地にはみ出しています。
この隣の敷地は今でこそ他人の所有地ですが、建築確認時にはマンションの敷地として申請されていたものです。
入居者の方には全くお気の毒としか言いようがありませんが、悪い業者に引っかかってしまったものです。

既存不適格の場合、将来建て替える時に今と同じボリュームの建物は建てられないし、中古で売り出そうとしたときに何もわかっていない不動産屋なら取り扱うかも知れませんが、ちょっと詳しい不動産屋なら断ります。
仲介を受けたって、購入希望者にこのことを正確に伝えれば売れるわけありません。
だから、受けません、取扱いしません。
さらに言えば、少し調査能力のある銀行ならば、住宅ローンも使えない可能性だってあります。

今このAマンションが最優先でやらなければならないことは、その敷地を買い戻すことです。
大規模修繕工事を行うお金があるのならば、そのお金を敷地を買い戻すことに充てるべきだと考えます。
まずは、このことを区分所有者全員へ知ってもらう広報活動を行い、その上で総会を開催し、管理組合を法人化、そして敷地を買い戻すという手続きを行うべきです。
勿論それらと同時に敷地所有者との交渉も行わなくてはなりません。

つぶやき主にご依頼あれば何とか解決までの道筋を構築しますが、考えただけでも長い道のりです。
でも役員の皆さん、今がチャンスですよ。
大規模修繕工事でお金を使い果たしてしまったら、お・し・ま・いですよ。

このように悪徳不動産屋から敷地を売られてしまって既存不適格になっているマンションが北九州市内には沢山あります。
今のうちに何らかの方策を考えていかないとスラム化してしまってどうしようもなくなり、やがて北九州市にとってお荷物になると懸念しています。