マンション管理士の独り言・・・376

「良い子、悪い子、普通の子」

到津のAマンションでは、売主さんがそのマンションの敷地内に法的根拠なしに自社の駐車場を建て、そこからの駐車場収入を利益にしていました。
普通は土地の上に建物を建築するときは、所有権か地上権、賃借権、あるいは使用貸借などの何らかの権利が存在しています。
しかし、このケースではこれらの根拠なしに売主所有の駐車場が建てられていました。
マンションの敷地内ですからその駐車場を利用するのは、当然ながらマンションの入居者です。
入居者からすれば、使用料を支払って停める点では同じなのですが、使用料の帰属先が通常の場合とは大きく異なります。
通常の場合は、管理組合会計に納入されて、将来の大規模修繕工事のために積み立てられるのですが、この到津のAマンションでは、駐車場の所有者は売主ですから使用料は売主の懐に入っていきます。
ですから、当然のこととして、修繕積立金が貯まっていきません。

分譲後10年くらい経って、理事のお一人が“何かおかしくない?”って気づいて訴訟に発展しました。
そして3年前くらいに、売主はその駐車場を無償で管理組合へ譲渡する、そのかわり売主が得ていた過去10数年の駐車場収入は管理組合に返却しない、という交換することで合意しました。
少し気づくのが遅いものの管理組合がキチンと機能したので、ここの管理組合は普通の子です。

良い子というのは、良い管理組合の事で、これは小倉北区朝日が丘のBマンションです。ここも到津のAマンションと同じ売主です。
しかも敷地の真ん中にドーンと駐車場が建っているところも同じです。
ですが、駐車場収入は当初より管理組合会計に納入されています。
何故だか良くわかりませんが、とにかく素晴らしいことです。
さらにこのBマンションでは、分譲時に売れ残った住戸、いわゆる未販売住戸の管理費・修繕積立金を粘り強い交渉を通して、その売主に負担させることに成功しています。
未販売住戸と言いながら、売主が所有しているのですから、その分の管理費などを負担するのは当たり前と言えば当たり前ですが、その当たり前がなかなか実践されていないのが現実です。
この百戦錬磨の売主を相手に未販売住戸の管理費などを回収したというのですから、驚きです。
このBマンションは良い子です。

さて、悪い子は、というと・・・。
現在分譲中のマンションの多くでは、契約時か引き渡し時に管理に関する承認書というのに署名捺印を求められます。
そこには、未販売住戸ある時は、1年目に限り管理費が不足するときはその不足分は売主が負担すると記載されているものがあります。
これには2年目以降については記載がありません。
実態としては2年目以降の未販売住戸についての管理費などは、管理組合から指摘を受ければ負担するが、指摘なければそのまま負担しないというのがまかり通っているようです。これに気づかず、2年目以降の未販売住戸の管理費などを請求せずにホッタラカシにしているマンション管理組合は悪い子です。

悪い子もせめて普通の子にはなれますよ。
今からでも、遅くないっすよ。