マンション管理士の独り言・・・403

「インターフォン設備の更新」

業界用語で「更新」とは、全く新しいものに取り換えることを指します。
これに対して「更生」とは今ある設備に手を加えたり補修したりして蘇らせる工法を指します。
端的な例が、排水管についてです。
排水管で「更新」とは、今ある排水管を撤去して新しい排水管を設置する事です。
一方「更生」とは今の排水管の中にエポキシ樹脂でライニングして、排水管の中にもう1本の排水管を自立させる工法です。
「更新」の方が全く新しい排水管になるのでイイに決まっていますが、工事期間が長くなったり、排水管経路が露出になったり、何より「更生」に比べて費用がかかります。
どちらの方法を選ぶかは管理組合さん次第ということになります。

お世話している管理組合さんで“部屋うちのインターフォンが鳴らない、”という苦情が理事会へ持ち込まれました。
築20年のマンションですが、インターフォン設備については手つかずのままです。
他にもインターフォンは動作しない住戸があるのでは、と全戸にアンケートを実施しました。その結果、全体の25%の住戸で不具合が見られました。
ひどい住戸になると住戸内の情報盤を操作してもエントランスのオートロックを解除できない、とい状態です。

このマンションのインターフォン設備はパナソニック製で、急ぎ電気工事店に部品や代替品の在庫状態を調べてもらいました。
ところが結果は、“もう20年も前の商品なので部品も代替品もありません”とのことです。インターフォン設備が不良の場合、その原因の95%以上が機器そのもので、配線・配管の不良はまず考えられないということです。
ですから、今回の場合「更新」つまり新品へ取り替えるしか手立てがありません。

ここからがマンション管理士の出番ですが、長い道のりです。
とてもとても長い道のりです。
このマンションの管理規約では、エントランス前のオートロック情報盤と配線配管は共用部分ですが、住戸内のインターフォン設備と住戸前の玄関扉横についているインターフォンは専有部分とされています。
規約通りに費用負担するとなると、エントランス前のオートロック情報盤の更新費用は管理組合が負担しますが、住戸内のインターフォン設備は各組合員が負担する事となります。これでは取り替える方と取替ない方が生じてくることが考えられます。
では全額管理組合負担で実施するのか?或いは1部を組合負担とするのか?などいろいろと検討し、そのうえで結論を導き出さなくてはなりません。

さらにインターフォン設備を今まで通りの機能とするのか?これを機会にスペックアップするのか?機種はパナソニックか?アイフォンか?仮にパナソニックとした場合には施工電気店はどこにするのか?・・・・なんて考えだしたらキリがないほどやらなきゃならない事が目白押しです。
何度もアンケートを取り、臨時総会の開催は必須ですし、説明会だってやらなきゃなんないでしょう。

それでもキチンと公平・公正・透明性をもって進めなければなりません。大変な作業です。どんな場でもいろんな方がいて、さまざまな意見があります。
それらの中で合意形成を図るのはとても難しい事です。
ですがマンション管理士はそれが仕事です。
マンション管理士が出来れば、なんでもで出来ちゃうような気がしています。