マンション管理士の独り言・・・406

「謄写請求」

聞きなれない言葉だと思いますが、“謄写”っていうのは、つまりはコピーの事です。
多くの管理組合では、その規約に中に、利害関係者は議事録や会計帳簿の“閲覧”を請求することができると規定しています。
でもよく読むと“閲覧”だけは認められていますが、“謄写”までは認められていません。

なぜ、“閲覧”だけ認めて“謄写”は認められていないのかっていうと、議事録や会計帳簿は管理組合内部の資料に過ぎず、区分所有者や利害関係人の権利としては情報収集のための閲覧だけで十分でしょ。
また、謄写には時間や手間ひまかかるし、濫用のおそれだって考えられるし、みたいなところです。
しかし、区分所有者や利害関係人からすれば、“謄写”して持って帰ってじっくり検証してみたいと思うのも当然だし、今ならそんなに時間もかからずに“謄写”できます。

そして“閲覧”の規定があるだけの管理規約の場合に“謄写”が認められるかどうかが裁判で争われることとなります。

平成23年9月15日の東京高裁では、謄写の権利を否定しました。
原審では謄写の権利は認められていたものを覆したのです。

まずは原審の考え方。
「組合員は組合財産の実質的な所有者であり、これらが適切に使用されているかを監督し、問題あれば是正する権利がある。そのためには会計帳簿などを正確に知る必要があるので閲覧請求権を認めている。」とした上で、「会計帳簿などは数年にわたり、相当な量があると考えられ、その場での閲覧だけでは充分に目的を達成できないことが想定されるから、閲覧請求権を認めるという趣旨に鑑み、謄写も認めていると考えるのが相当である」としました。

これに対して控訴審での東京高裁の考え方。
「謄写には作業時間や費用がかかるという点で閲覧が許されるから当然に謄写も許されるというものではなく、謄写が認められているかどうかは規約に規定されているかどうかに関わってくる。本件管理規約には謄写についての規定はないので、認められない。」
更に「当該規約は30年前のもので当時はコピー機が普及していなかったから謄写が認められなかったというが、直ちにそうとは言えない。また、閲覧だと相当な時間が費やされ、組合員に監督・是正の機会を与えるという法の主旨からしても謄写は認められるというが、そうとは言い切れない。閲覧時間を短縮するために謄写請求権を認めるべきと言う主張は理由がない」としました。

つまりは、組合員や利害関係人に認められているのは、閲覧だけであって、謄写(コピー)については規約に規定されていないのであれば、認められないよ、ということです。

つぶやき主さんはどう思うかって?僕ならその時々で、その立場立場で上手に使い分けます。