マンション管理士の独り言・・・442

「引き続き、そりゃないだろ・・・」

前回のポンプの設置ミス(つぶやき主は設置ミスと確信しています)により、断水がひんぱんに起こり揚句に、ポンプを取り替えなきゃならなくなった話の後篇です。
弁護士や他のマンション管理士にもいろいろと意見を聞いてみました。
まず、①損害を被った管理組合は誰を相手に損害賠償できるのか、についてですが、そのマンションを購入した区分所有者と売買契約を締結した売主=“不動産会社に対しては、損害賠償責任を問える”というのは全員の一致した意見でした。
この場合の責任は、瑕疵担保責任によるもので、これについては、宅建業法の「引き渡し後2年間」のうちに発見された瑕疵について賠償責任を問えることとなります。

しかし、本件についてはすでに引き渡しを受けて2年以上経過しているので、適用は難しそうです。
そうであっても瑕疵担保責任と言うのは売主が引き渡し時に「知らなかったこと」について責任を問えるのであって、今回のように屋内に設置すべきポンプを屋外に設置すれば、故障が起きやすいことを「知っていた」ならば、瑕疵担保ではなく不法行為によって賠償責任を問えるのでは、という意見もありましたが、どんなにアコギな売主でもわざと壊れやすいものを作るわけがないということで、不法行為にも該当しない、となりました。

瑕疵担保でしか売り主の責任を追及できないというのならば、もう引き渡しから2年過ぎているので責任追及は難しいとなりました。
また、もし仮に“おお甘に瑕疵担保責任がまだ使えますよ”となったとしても、この売主は民事再生法を東京地裁に認められていますので、債権はおそらく90%カットとなることが考えられます。
これじゃ仮に“売主に責任あり”と認められても10%しか回収できないこととなり、裁判費用も出やしない、ってことです。

では②施工した建設会社に対して責任を問えるかとなると、建設会社は、“設計士の図面通りに施工しているのであって、建設会社には責任ないよな”です。建設会社が設計士に指示された図面と異なる施工をしていれば問題アリですが、常識的に見てこんなことはあり得ません。

それなら③“設計会社に対して賠償請求させるべ”となってもそう上手くはいかないようです。
通常マンションの設計会社は、構造や外観デザイン・意匠についての設計を行い、設備関係については地元の小さな設備設計会社へ下請けに出しています。
「ここだ!ここが屋内設置すべきポンプを屋外設置とする図面を書いて指示したんだ、ここに賠償請求するべ」となりました。

しかし、設備設計会社というのは従業員2~3人程度の小さな規模でほそぼそとやっているような会社がほとんどです。
そこを相手にして訴訟を提起し、仮に認められたとして、賠償金を回収できるかといえば、実現性は極めて低いだろうという見解になりました。

それなら④“ポンプメーカーに責任とってもらうべ”と考えましたが、ポンプメーカーはポンプそのものに不具合があるのであれば別ですが、“納品後に施工者が設置要領と異なる場所に設置したとしてもその責任は問えないよな”となりました。

マンション購入者は民法や宅建業法、品確法、区分建物所有法、さらには消費者保護法、消費者契約法で守られているといっても、実際に損害が生じた時に、「いつまでに」「だれを相手に」「どのような理由で」損害賠償を請求するのかについては、とっても詳しい知識が必要です。
特に分譲マンションの場合、マンションを購入した区分所有者は、直接の契約の相手方である売主は勿論ですが、購入した人が依頼したわけでもない、建設会社、設計会社、下請けの設計会社、部材のメーカー、その設置者などが関係してくるので、直接の原因を作った人を探し出すのはとても大変です。

この様な状態でほんとうに“これら法律で守られていると言えるのか??”

怪しいものです。