マンション管理士の独り言・・・478

「ネットを利用しないのにネット利用料金を支払わなければならないの?」

最近のマンションにはいろんな設備が導入され、予め売主さんがそれらの設備業者さんと導入・仕様について取り決めしています。
そして購入者はそれらの取り決めを継承しなければならないとされています。これは専有部分についても行われています。
代表的な例が、ネット利用料金やディスポーザーメンテナンス料金などです。
特にネット利用料金などは予め管理費に加えて徴収されている場合がほとんどです。

「自分はネットを利用しないのに、利用料を管理費に上乗せされて徴収されるのはおかしくねエ、そんな規定は無効じゃん」と思った人がこの代金支払いを拒否し、管理組合とトラブルになっちゃいました。
これに対して管理組合が訴訟を起こしました。

以前は、ネットを利用するためには、各区分所有者がプロバイダーとの間で契約をした上で、自費で共用部分を通して専有部分に配線するという方法が一般的でしたが、最近ではネットの普及に伴って販売時にネット利用のための設備を共用部分に設備して各区分所有者が自由に利用でき、ネット利用料金は住戸数で頭割りするという方式をとるマンションが増えています。
そんな中でネットを利用していないのに、「全区分所有者にネット料金を負担させるという管理規約は無効で俺はそんなの支払わない」と言う区分所有者に対して、規約は有効だという確認を求めて管理組合が訴訟を提起したわけです。

その結果裁判所は管理組合の請求を認めました。
判決の内容を分かりやすく、かみ砕いて、はしょって、おおよそこんな感じかなって、かなりアバウトに、その程度でご紹介します。

『ネットのLAN配線設備そのものは共用部分ということができ、その保守・維持メンテナンスは管理組合が行うべきで、それに要する費用は区分所有者が全員で負担すべきものです。これに対し、各戸へ供給するために締結されたネット回線契約やプロバイダー契約の費用は各戸にのみ存在するように見えるが、しかし、このようなサービスがマンション全体に提供されているという事はそのマンションの資産価値の増加にもつながるから仮にネットを利用していない区分所有者であっても恩恵は受けていると言える。
また、各戸ごとにネットの利用状況を調べて利用料を徴収するのは人的・物的コストがかかる。さらに、利用していても利用していないと申告するただ乗り区分所有者も出てくる可能性もあり公平とは言えない。そんなこんなでネット料金を一律徴収するという管理規約の規定は合理性がある』また、『ネット利用料金は月額2,835円じゃん。不相当に高額ではない』と料金についても論じています。
要は、「月に2,835円じゃん。ブーブー言うな」です。
勿論裁判所ですから“ブーブー言うな”なんて言いませんが、そんな感じです。

分譲当初から付けられている設備には、大部分の人は必要とするけれども1部の人には必要ないなんてものがあります。ましてやその設備を利用しようがしまいが管理費に一律上乗せ徴収されているとこのような問題が生じることがあります。
だからと言って、分譲の段階で何も設備していなくて、“どうぞ入居後に管理組合さんで決めてくださいね”ってやられても、管理組合はとても大変です。
アンケートを実施したり、数社から見積もり取ったり、議案化して総会で承認しなきゃならず、承認となっても工事手配なども必要になってきます。
当初から売主さんが設備していてくれたら楽ちんなのに、なんて思う事もしばしばです。

大勢の人が必要とするであろうものは分譲当初から設備されていて、そんなに多くのひとは必要としないだろうと思われるものは入居後の管理組合の意向に委ねるってことになりますが、この辺の折り合いはとても難しいこととお察しします。
しかも売れなきゃなんないし・・・。