マンション管理士の独り言・・・485

「瑕疵担保責任」

瑕疵担保責任とは、契約の目的物を売主も買主もキチンとしたものだと思って引き渡したけれど、後日隠れたキズがあったことが判明し、契約の目的を達せられない場合に、売主は買主に対して責任を負っていますよ、ということです。
民法では、この責任期間を瑕疵があることを知ってから1年間としていますが、不動産売買の時は宅建業法により、例外的に引き渡し後2年間と定められています。
買主は売主に対してどのような責任を問えるかと言うと、損害賠償責任と契約解除とに限定されています。
このように民法では、瑕疵の補修は認められていないのですが、これでは実務上便利が悪いので「住宅の品質確保に関する法律」によって、瑕疵補修も認められています。

「住宅の品質確保に関する法律」では“雨水の侵入を妨げる部分”や、“構造上主要な部分”は10年の瑕疵担保期間ですが、それ以外の瑕疵については引き渡し後2年間に限定されています。
逆に言えば、通常の部位の瑕疵は引き渡し後2年の間に発見して請求しなければ、“売主は補修などを行ってくれない”あるいは“法律的・契約的には補修を行わなくてよい”ということになります。

「2年後に発見されたものでも、当社はキチンと補修など対応しますよ」なんていう営業マンがいるかも知れませんが、あまり期待しないことです。
経験上、「2年過ぎていますので、補修するには費用を頂戴します」というところがほとんどです。
しかし、この売主さんの対応は間違っていません。
契約行為ですから、担保期間が過ぎれば契約書通りに行うのが至当です。瑕疵に気が付かないアンタ(=買主)が悪い・・・です。

従って管理組合は引き渡し後2年のうちに瑕疵を発見し請求しなければならず、2年を経過すれば基本的に有料補修になるという事を認識しなければなりません。
なにも“2年間のうちに粗探しをしましょう”というのではなく、「この部位に瑕疵があったら、将来大変だろうし、補修にもお金がかかるな」と思われる部位を2年間のうちに調査点検しましょう、ということです。

専有部分については、基本的にその住戸には人が住んでいますので、瑕疵があれば2年もかからずに発見できるのでしょうが、共用部分については、調査しなければわからないという場合がほとんどです。
具体的には雨水管・雑排水管の脱管などの不具合、屋上防水の仕上げ確認・給水ポンプの設置状況・駐車場などの雨水勾配などについて管理組合は調査診断をすべきです。

竣工時に完売しているマンションならば、入居後6~8カ月で設立総会が開かれます。
そこで第1期の理事長さんはじめ役員が決まりますが、その役員さんはお金をかけてでも共用部分の調査診断を行うべきです。
管理会社さんは、このような提案は間違っても行ってくれません。
理事会が発議し、行わなければなりません。
設立総会が6~8か月後ですから第1期の役員さんが決まるまでにもうすでに半年以上経過しています。
ぐずぐずしていたら瑕疵担保期間の2年なんてアッと言う間に過ぎちゃいます。

仮に瑕疵が見つかったら、無償で補修してもらわなきゃだし、その時は調査診断費用も請求しちゃいましょう。
無事に何も瑕疵が発見されなかった時には調査診断費用は「安心料」と思えば安いものです。
共用部分の調査診断を瑕疵担保期間の2年の間に行いましょう、というのが今回のつぶやきでした。