マンション管理士の独り言・・・499

「勘違い理事長」

標準管理規約でも理事長のお仕事は区分所有法上の管理者として、業務を統括することです。
実務的には、総会で決議されたことを実行する責任者といったところでしょうか。
単独で理事長判断だけで出来ることと言えば、特別に規約で定められていない限り保存行為くらいなものです。
保存行為と言うのは、例えばマンション廊下から雨漏りがするのを修理するというようなもので、これは別に理事長でなくたって区分所有者なら誰だってできます。
要するに長という肩書はつくものの理事長単独判断でできるものは特別にはありません。

理事会だって同様です。
理事会の役目は、予算(案)、決算(案)、議(案)の作成と言う具合にすべて(案)作成のみです。
そしてその(案)が総会で承認を得れば、それを実行する執行機関となります。
このように理事会、理事長にはハッキリ言って自分で物事を決めることができる権限はありません。

これを勘違いしている理事長さんが結構います。
総会で決めるべきことを“理事長判断でこのようにしました”なんて掲示物があったりします。
総会で決めるべき事柄か?それとも、総会にかけなくてもよい事案か?なんてことは考える余地さえありません。
総会で決めるのです。
理事会やましてや理事長が決めちゃダメです。

でも何か事が生じて、その都度総会を開催していたら、しょっちゅう総会を開催しなきゃなんない、ってことにもなり兼ねませんし、ハッキリ言って、理事会さんも大変です。
総会の都度、議案書を作成しなくちゃ、になりますから本業持ってて“そんなに管理組合の仕事ばかりできるかよ”です。

ですから総会では「○○の件については理事会に一任してください」とやるのがテクニックです。
理事会の出来ることは、標準管理規約にも(案)などの作成の他、「その他総会から付託を受けた事項」に関しては理事会で決められるってなっています。
予め総会で“この件は理事会に任せるよ”って承認を得ていれば、理事会で決定できます。
そして理事会でも「この件については、理事長一任」というのを取り付けていれば理事長のみの判断でOKとなります。

このような手続きを経ずに、“理事長判断でこのようにしました”はルール違反でしょ。
“誰がアンタにそんな事頼んだ”ってことになる例をイヤと言うほど見てきました。
折角マンションの事を思ってイイ事やってんだから、独善的にじゃなく、ルールを守って合意形成に汗をかきましょう。

理事長さん、ご苦労様です。ホントに大変なお役目だと頭が下がります。