マンション管理士の独り言・・・504

「上階からの漏水」

18日付けの西日本新聞朝刊に「マンション相談室」が載っていました。
「上階からの漏水は誰に責任あるの?」っていう質問に福岡マンション管理組合連合会が答えていました。
① 「その部屋の使用者に責任あるときはその人」
② 「その部屋の使用者に責任ないときはその住戸の所有者」 
③ 「原因が専有部分か共用部分か分かんない時は管理組合」 
④ 「下の階の天井裏に配管されていてそこから漏れていた時は、管理組合」って回答です。

流石に杉本さんのところです。素晴らしい回答です。
マンション管理士だけのことはあります。

でも紙面の関係で仕方ないのでしょうが、あまりに端的・要領を得過ぎていて、一般の読者は分かんないかもです。
そこで、頼まれてもいないのにより深く解説しちゃいます。
まず、①についてですが、住戸を賃貸している時に賃借人が例えばピンポン玉を詰まらせちゃった、などで原因が明らかに賃借人(=使用者)にあるときは賃借人の責任となります。②賃借人に貸しているけれど、漏れた原因はその賃借人にはない場合、となればその住戸の専有部分内にある配管からの漏れだとなりますから、その住戸の区分所有者。③漏れた原因が専有部分にあるのか共用部分にあるのか分かんない時は、区分所有法に規定により共用部分にあると推定されます。したがって、共用部分の管理を行う管理組合の責任となります。④その住戸の使用に問題ないけど、漏水しちゃった。その部屋の配管は床材とコンクート床の間に設置されてなくて、下の階の天井裏に配管されていたら、共用部分扱いとなり管理組合の責任。これは最高裁判例です。
結構このタイプの配管が多いようです。

ちょっと詳しくつぶやけば、このようになりますが、現実にはどうか?というとなかなかこのようスパッと竹を切るようなわけにはいきません。
最近のマンションは床コンクリートと床フロアー材の間に配管していますが、ここから漏れたとすると、標準管理規約では、床コンクリートの上端からが専有部分となりますので配管も専有部分です。
しかし、床フロアー材の下に配管されていて、時折床フロアー材を剥ぐって漏水してるかどうかを点検なんか出来っこありません。
とは言っても、専有部分には間違いありませんからの住戸の区分所有者の責任です。
さらに、最近の水栓はレバーハンドルタイプが多いのでドンドンとレバーを上げ下げするたびに中のネジが緩んじゃってそこからの漏水なんかも見られます。
漏らしちゃった住戸の使用者(或いは所有者)ですから保険上は「加害者」という扱いになってしまいます。
この「加害者」という言葉にアレルギーをおこします。
「いつも通り使っているのに何で加害者なんだ」「定期的に床フロアー材を剥ぐって点検しなきゃなんないの?」「たった何年で漏水するようなものを作った売主に言えよ」という調子です。
漏らした上の階の方ですらこの調子ですから、被害にあった下の階の人なんかもっと激しい言葉です。
なんとか取り持って、管理組合が付保している損害保険の漏水原因調査費用や個人賠償責任特約なんかで処理する場合が多いようです。

しかし、共用部分の保険を付保していない管理組合もやたらに多くて、こんな時はその補修費の負担でモメます。
管理組合に負担させたくない理事長と、何で自分が負担しなきゃなんないの、って思ってる区分所有者の間で綱引きが始まり、その行司役は決まってつぶやき主です。
どっちに転んでも、どっちかには恨まれる損な役目です。

管理組合に必要なものは集会室と管理組合用ポストと、それに共用部分の損害保険も新たに加えちゃいます。