マンション管理士の独り言・・・533

「あの手、この手」

安く仕入れ、その上に利益を乗っけて売るのが商売です。
更にその商品が短期に売れれば言う事なしです。
“その商品はどこも扱っていない、ウチだけだよ”っていうオンリーワンの業者さんならば強気の販売単価を打ち出すことが出来るし、利益もかなり期待できるはずです。

ところが新築マンションでは、市内いろんな業者さんがありますし、どこも他に抜きんでて商品力が素晴らしいってものでもありません。
大体似たような構造、設備です。
パンフレットを見たって同じような設備仕様が並んでいます。
環境・利便性だって同じ学校区に建っていればそれほど差はつきません。

それでも適正な利益を確保しなきゃなりませんし、早期に完売しなきゃなりません。
マンション売主さんはオンリーワン企業じゃありませんし、沢山の競合相手に勝ち抜かなきゃなりません。
じゃどうするか?“仕入れ価格を押さえよう”ってなりますが、土地は入札して落札しなきゃなりませんから、そんなに安く仕入れられる土地って滅多にあるものじゃありません。工事単価は?っていうと、東北の震災復旧に職人さんが取られ、北九州では慢性的に職人さん不足です。
こんな状態の中で工事単価なんて落とせるわけがありません。
“安い金額じゃ請け負わない”っていう建設関連業者が増えています。
これに東京オリンピックが重なればもっと職人さん不足、工事単価の値上がりが懸念されています。
したがって販売価格を上げたいのは山々ですが、ただでさえ消費税が5%➔8%➔10%になるのに、「そんなことすれば売れない、在庫を抱え込んじゃう」って結果が見えています。

前置きが長くなりましたが、「それなら、設備仕様を落とそう」っていうことになります。でも、あからさまにスペックダウンすると消費者にソッポを向かれちゃいますので、わかんないように仕様を落とします。
経験上と実例を基に将来のマンション仕様を予測すると、①水:セメント比が55~60へ変わっていきます。  ②風除室がなくなり、いきなりオートロック操作盤ってなります。  ③都市ガス仕様がプロパンガス仕様になります。  ④バルコニーについている避難ばしごがワンフロア―1戸になります。  ⑤機械式駐車場の塗装仕上げが、亜鉛メッキではなくなります。  ⑥機械式駐車場の操作盤が20数台にひとつとなります。  ⑦住戸前の玄関廻りにタイルが一枚も使われることなく、吹付仕様となります。  ⑧集会室など売主にとって利益に直接結びつかないものを止めて住戸として売り出します。

何故、こんな事が予想できるのかって言えば、現在分譲中のマンションや築浅マンションの実例を挙げているだけだからです。

パンフレットやモデルルームを見てマンションを購入し、夢膨らませて内覧会に臨み、自分の住戸玄関前には1枚のタイルも貼っていなくて、落胆する人が増えることが予想されます。

売主さんの原価を落とすための工夫「あの手この手」を見抜けなきゃ、賢い消費者とは言えませんよ。