マンション管理士の独り言・・・554

「修繕積立金が6,2倍へ」

現在分譲中の大手町のとあるマンションです。
人気のある大手町物件だけあって販売好調のようです。
もうすでに何人かの購入希望者からのご相談をお受けしました。
ここの売主さんの物件は特に管理規約が個性的・特徴的ですが、今回は長期修繕計画に興味をそそられました。
キチンと値上げの事が長期修繕計画に記載されている点についてはウェルカムですが、分譲当初平均5,000円の修繕積立金が25年後に31,000円へと6,2倍に値上げされています。

多くのマンションで分譲当初の積立金が5年後には2倍、10年後には3倍になっていますが6,2倍はこれまでの最長不倒です。ジャンプならK点超えです。
5年後に2倍、10年後に3倍になるのも25年後に6,2倍になるのも、売主さんが分譲時に販売の足を引っ張らないように当初の積立金を意図的に低く設定しているのが理由です。

6,2倍のマンションを良く見てみると「なるほどこれじゃ積立金が高くなるな!」です。
駐車区画のうち20%が分譲駐車場、さらに残りの駐車場の90%が機械式駐車場です。分譲駐車場ですから毎月の駐車場使用料は管理組合へ入って来ませんし、機械式駐車場の使用料はそのメンテナンスで飛んで行ってしまいます。
残った10%平面駐車場の使用料だけがかろうじて管理組合の財産となりますが、これだって管理費へ充当されちゃって修繕積立金へは1円も入金されていません。
「これじゃ6,2倍になるよな」って感じです。

「6,2倍になっても払えるからいいじゃん」って思ってるのかもしれませんが、これは資産価値の減少に結びつくのです。
仮に25年後にこのマンションの1室を売りに出そうとして、その時の販売価格はかなり下げざるを得ません。
購入者は毎月のローンの支払いとともに管理費+修繕積立金+駐車場使用料を合計した金額で購入するかどうかを決めるからです。
修繕積立金だけで31,000円もするならばそれに見合っただけ販売価格を下げなきゃ、購入希望者から見向きもされなくなっちゃいます。

売主さんは全戸売れて、その上分譲駐車場の売上代金までゲットできてホクホクなんでしょうが、その“付け”がこのマンションの購入者の資産価値の目減りにつながります。

加えて言えば、こんな中古マンションが増えてくれば、仲介不動産屋さんは売れない物件を抱えちゃって困りますし、もっと言えば、今のマンションを売って新築マンションへ買い替えるってことが出来なくなっちゃいます。
大きな目で見れば売主さんを含めた将来の不動産屋さんの食い扶持を狭めていっていることに他なりません。

街中なので機械式駐車場は仕方ないかもしれませんが、せめて分譲駐車場は止めてよって思います。