マンション管理士の独り言・・・571

「事前承認」

ゆくゆくは管理組合で設置すべきもの、或いは取り替える必要があるものを“今この時期に自己の専有部分に設置したいから許可して?”っていう申請が出されることがあります。
よく見る例として、鳩害対策のためのネット張りや忌避剤塗布、結露防止のためのペアサッシュ、ガス警報器などがあります。

特にガス警報器は5年が耐用年数なので取り換えをお勧めします、と西部ガスさんからの熱心な売り込みがあります。
消火器設備のように取り換えが法律で義務付けられているわけではありませんが、「もし万が一、ガス漏れがあったら感知しにくくなりますよ」ってわけです。
実際には感知しにくくなるよりも敏感に反応し過ぎて頻繁に誤報するっていう事の方が多いようです。

管理組合としても“耐用年数が切れたものをそのまま使い続けるってのもどうか”って考えるところが多く、“じゃ、この際全戸一斉に、管理組合の費用負担で”ってなります。
ところが「全戸一斉に管理組合の負担」って掲示したとたんに、クレームがつきます。
“自分のところは、1年前に取り替えたから今回は取り換えの必要がない。それに管理組合で費用負担するのはおかしかろうもん。そんなら自分で負担した費用を返却してくれ。”ってご意見です。
5年経過してすぐに取り替えるのならばいいのですが、7~8年経ってから取り替えようとすると必ずその間にご自身で取り替えた人からこんなクレームがつきます。

事前に取り替えようって考える方は、気の早い方か、或いは法令順守のキチンとした方か、でも実際は西部ガス関係の方が多いようです。
そして多くの場合、その折に管理組合に「自分で取り替えようと思っているが、将来管理組合で取り替える予定があるか?」って聞きに来られています。
その時の対応が大切です。
「今のところ管理組合で取り換えの予定はないけど、将来は管理組合負担で全戸一斉に取り替えるかもしれません。その時はお宅が自己負担した分は返金しませんよ。それでいいなら一筆書いて自己負担で取り替えてください」ってします。

鳩避けのネットだってそうです。
「自分でするのは構わないけど、将来管理組合で実施するときに自分が払った費用を返せなんて言わないでね」と釘を刺しておくことを忘れずに。

最近お世話を始めた管理組合さんでガス警報器の一斉取り換えを総会に議案上程しました。
“事前に自己負担で取り替えた。管理組合負担はオカシイ。自分が負担した分を返せ”って言う人が出るんじゃない、って心配していました。
反対意見は出ましたが、理由はこのことではなくて、「自分っちはオール電化にしたからガス警報器はない。だから管理組合負担はオカシイ」ってものでした。
しかも複数人が同様の意見で反対しています。
“オイオイ、オール電化にするならアンペア数の増量が必要だろ。それって管理組合への届出事項だぞ。管理会社は聞いてたの?”

結局一通の届け出も出されておらず、何世帯がアンペア数の増量をしているのかも管理会社は全く把握していない状況でした。
そんなこともわかってなくて議案化すんなよ。