マンション管理士の独り言・・・572

「雨水排水」

ゲリラ豪雨のせいなのか、エントランスに雨水が侵水し、一面水浸しになるというマンションが増えています。
もう少しでエレベーター内に浸水するところだった、っていうケースもあります。
つぶやき主は年間50件近く内覧会同行をしますが、専有部分のみならず共用部分も気をつけていますが、その中でも特にエントランス廻りの雨水排水の設置具合を観察します。
エントランスが坂道の途中にあり、側溝も意匠的にそうしたのか、メクラになっていてグレーチングもなく雨水の処理が明らかに不足しているマンションを度々目にします。
そんな時には管理会社さんに“入居が始まる前にグレーチングに変更するなどの手立てが必要ですよ”ってアドバイスするのですが、“手直しはしないだろうな”ってあきらめの境地です。

お世話している北区のマンションは、いわゆる高級マンションです。
重厚な外観でタイル1枚見ても厚みがあり凹凸にも自然な風合いが感じられます。
エントランスの自働ドアも2500mm以上の高さがあり、天井の高い広々としたロビーにはオシャレなソファが置かれ、爽やかなBGMも流れています。
新卒の新入社員が、「将来はこんなマンションに住めるようになりたい。仕事がんばるぞ!」って目標にするようなマンションです。

しかし、豪雨となれば様相が一変します。
当期の理事さんが総出で、エントランス前に土嚢を積み上げます。
早朝3時のゲリラ豪雨の時には管理人さんだって早朝出勤して土嚢運びです。
旧役員さんから新役員さんへの引き継ぎの際には、真っ先に土嚢の収納場所の確認から始まるほどです。
管理人さんが泣きついてきました。「つぶやき主さん何とかして下さい」です。
築10年超のマンションですし、管理会社へ全部委託です。
“管理会社は何やってたんだ”って感じです。
でも高級マンションで豪雨の時には役員さん総出で土嚢運びじゃみっともないし、こんなことをこれからも続けていただくわけにもいきません。

豪雨の時に流れ込んでくる雨水の多くは前面道路からのものです。
マンション敷地と道路境界には高低差が全く設けられてないし、勾配はマンション敷地の方が低いときています。
また側溝はメクラで雨水が入る孔さえ設けられていません。
“これじゃ浸水するよ”って見ただけでわかります。

早速まちづくり整備課へ相談です。
現地で立会い、側溝の手直しと一部をグレーチングへ取り替えてもらうこととなりました。「これとこれを取り替えてよ」って居丈高な態度、言い方、ではまとまるものもまとまりませんので、腰を低くしお願いベースです。

何とか了承を取り付け、今度はマンション敷地内の雨水処理です。
エントランス前が一番低くここに水が殺到します。
申し訳程度にグレーチングがついていますが、“こんなのでハケるわけないっしょ”っていうくらい細く、浅いものです。
このやり替えを管理組合へ提案することにしました。

これらでおそらくエントランスへの雨水侵入は止まる事でしょう。
マンション建屋内、敷地内のトラブルについては管理組合の責任と負担で対処しなければなりませんが、道路を含め敷地外に及ぶときは役所へお願いしなければなりません。
例えばグレーチングやカーブミラー、道路へのペインティングなどです。
この辺りの折衝能力、交渉術、そして嗅覚は経験でのみ培われるものです。

段々、良いマンション管理士になってきてるなっ、地力がついてきてるなって、感じです。