マンション管理士の独り言・・・590

「可否同数」

先週の日曜日は説明会2つに海を渡っての臨時総会1つと大忙しでした。
こんなことならキリスト教を信仰して、「日曜日は安息日なので、教会でお祈りします。仕事は出来ません」とすれば良かったと。
宗教を仕事したくない言い訳につかうなんて神をも恐れぬ不届き者でした。

臨時総会の議案はたった一つ。
「ペットを永代飼育可」とする議案です。
このマンションでは分譲当初からペット飼育禁止でしたが、売主のいい加減な売り方で、「小さなペットなら飼ってもいいですよ」と言われた方が何人もいて、つぶやき主がお世話しだした5年前には全世帯の4分の1でペットを飼育していました。
皆が見て見ないふり、当然ルールもないと言う一番悪い状態でしたので、アンケートの実施、説明会を何度も開催、そのうちの一つはペット飼育賛成者と反対者の意見交換会なんてのもやりました。
そして、何とか「現に飼育しているペット1代限り飼育可」というところで折り合いをつけて議案承認をいただきました。

その後は大したクレームもなく推移していましたが、とあるご家庭から新たにペットの飼育申請が提出されました。
“同じマンションに住んでいるお友達はワンちゃん飼っているのに何でウチはいけないの?”と小学生のお嬢さんにせがまれたのです。
「ペットを飼育できるのは使用細則設定時に現に飼育しているペット1代に限る」というのも新たに飼育を始めようとする方から見れば不公平です。

そして理事会では“前回アンケートを実施した時から5年も経過しているし、その間クレームもないので組合員のペットに対する意識も変わっているかもしれない”と再度アンケートを実施しました。
その結果、5年前には25%しかいなかったペット飼育可が何と75%の方がペット飼育可に増えています。
更にその75%のうち半数以上が「ペット永代飼育可」なのです。

このアンケート結果をもとに臨時総会を開催しました。
臨時総会では、ペット飼育反対の意見が多く出されました。
意見も出尽くしたようなのでいよいよ採決です。
理事長への委任状や、書面による議決権行使に当日参加者の承認者を加え集計すると、ピッタリ可否同数です。理事長が不安げな目でつぶやき主に聞いてきます。
「可否同数なら議長である私が決めるの?」最終的に重い判断を自分がしなきゃなんないのか不安なご様子です。
「いいえ、可否同数の場合は総会参加者の過半数の承認が得られたとはなりませんから、否決です」

「可否同数で否決です」
ドラマの様でした。

会場は、しばらくの間、シ~ンと静まりかえっていました。
アンケートの結果からすると、間違いなく承認されると思っていたのに、アンケート結果は何だったんだ!って感じです。

その夜、ペット飼育委員長が新たにペット飼育したいという申請者のお宅を訪ね、結果を報告しました。
ドアの向こうで女の子のすすり泣く声が聞こえたそうです。

これもマンション。